禁じられたお酒






「何?に酒飲ませたの?」

守護者達が会議やら抗争やらで一定以上の人数が集まると、必ずと言っていい程夜は酒盛りが始まる。ほぼ毎晩行われていたが、最近は各々が忙しくそうそう開かれることも無くなった。だからこそ、今日は人数も多く集まったのだろう、仕事一筋の獄寺が今日は早々と切り上げて来る位には。群れるのを是としない雲雀ですら、最近は顔を出す事もある。勿論、雲雀が顔を出しやすいようにも必ず連行される。とはいっても彼女はいつものらりくらりとアルコールを躱している。曰く自分は全くの下戸で、一口で記憶が無くなった上その場にいた風紀財団の仲間に醜態を晒し、雲雀から禁止令が出たとのこと。それを聞いてから素面の時には誰も飲ませようとしない。雲雀が彼女の元上司とはいえ、彼が禁じているのだ。好奇心という名目だろうと彼女アルコールを与えた事が知れてしまえば確実に咬み殺されるだろう。勿論この場合殺されるのは猫ではなく、その場に居合わせた人間全員が。
今日の出来事は、いわば事故だ。の飲んでいたジュースとクロームの飲んでいたカクテルが隣に並び、入れ替わっていることにが気付かず口にしてしまったのだ。部屋はアルコールの匂いが充満していたので、間違えてしまうのも仕方なかっただろう。最初に気付いたのは骸だった。

「クローム、お前の横にあるグラスはの飲んでいたものでは?」
「え?あ・・・本当です。骸様、これジュースです」

それに気付いた面々が一斉に会話を止め、の方に視線を向けた。

「なぁ、獄寺」
「あぁ?」
が酒飲んだトコ、見た事あるか?」
「・・・いや、ねぇ」

この場に雲雀が居なくて本当によかった。そう思いつつ全員がを観察している。どうやらがアルコールを口にした姿を見るのは初めてらしい。

「どうしたんですか?皆さん」
「・・・いや、何でもねぇよ」

可愛らしく小首をかしげるに獄寺がやや間を開けて応える。全く様子の変わらない彼女の姿に一同が胸をなでおろした。一人事情を知っている骸だけ、僅かに青ざめた顔でこの場をどう立ち去ろうかと思案していたが、彼にクロームを置いていくことが出来る訳が無く。

、それ、お酒」
「え?ホント?美味しいから気付かなかった」
「じゃあコレ飲んでみるか?」


他の面子がに酒を勧め今まで頑なに拒んでいたのが嘘みたいな飲みっぷりだ。グラスにそそがれるがままに飲む姿に、雲雀過保護説が浮かぶ。量が進むにつれ頬を赤らめ潤んだ目は確かに破壊力抜群だったので、これが雲雀の隠したかったの酔った姿なのだと誰もが思った。

「うわぁ、みんなもう大分酔ってるね」
「何?に酒飲ませたの?」

扉が開き顔を出したのは綱吉、そして珍しく彼の護衛をかってでた雲雀だった。二人は惨状をみて、それぞれの見たままの感想を述べた。獄寺は今回雲雀が綱吉の護衛をする見返りにと、の休暇が申請された事を思い出した。

「ほら、、帰るよ」

椅子に座っていたがゆっくりと雲雀に視線を向ける。彼女に向かい歩く雲雀に視線を固定し、正面に来た雲雀と目を合わせる。

「跪け」

ええええええええ!!!
色気と共に紡がれた言葉に一同が凍った。あの雲雀恭弥にそんなことを言うのはどの口だ!?というかってこんなキャラだったのか?このままではこの状況を作った全員が咬み殺されかねない。

「そのウイスキー、頂戴」

雲雀はそんなの状態を一瞥すると溜息を付いた。あれ?咬み殺すって出てこない?ギャラリーの心の声を余所に獄寺の隣にあった封の開いたウイスキーの瓶を持ち空いていたグラスに注ぐ。それをストレートのままあおり、もう一度注ぎ空になった瓶をもとあった場所に向けて放り、獄寺はそれをほぼ反射で受け取った。普段なら文句の一つでも言うのだが、この状態の雲雀を少しでも刺激してしまえばこの後どうなるかわからない。雲雀は瓶の行先には目もくれず、の正面まで行きグラスを隣に置き彼女の言った通りに膝をついた。
全員が自分の見る光景が信じられない。酔いも完全に醒めた。一人くすくすと笑うは今しがた雲雀の持ってきたグラスの中に左の人指し指を浸し、雲雀の目の前に差し出した。

「舐めて」

さー、血の気の引く音が聞こえた気がした。部屋の温度は確実に下がった。二人は周りの事など眼中にないようで、雲雀が唇を開き酒で冷たくなったの指に舌を這わせ咥内へ導いた。骸はここでクロームの目と耳を塞いだ。
ぴちゃ、ちゅくりと飲みこまれた指はいやらしい音を立てて舐め尽くされ、ゆっくりと抜き取られた。てらてらといやらしく自らの指先を満足そうに眺めながら、は右手に持っていたグラスの中身を雲雀の頭にかけた。
ー!!!
明日の朝日が拝めないかもしれない。
しかし二人の様子は周囲を取り巻く空気を含め、怖い位に先程と全く変わらないのだ。
の持っていたグラスの中身は飲み干され、溶けた氷が水となった位だったので雲雀もそう濡れてはいなかった。雲雀はの隣に置いておいたグラスの中身を一口、それからに覆いかぶさり口付けを施した。

「ん、ふぅ・・・」

おそらく口に含んだウイスキーをに飲ませているのだろう。その場にいた全員は目の前の光景から顔を背けエロい声に耳を塞ぎたかった、というか退散したかったのだが、金縛りに遭ったかのように硬直して動けない。
長いキスが終わりぐったりとしたを抱き上げた雲雀がその場を去っても、誰も、動けなかった。





翌日、何も覚えておらず、二日酔い文字通り頭を痛めているにの隣には、こころなしか楽しそうに看病している雲雀の姿があった。





「雲雀さん、私昨日一体何したんですか?皆さん目をそらして教えてくれないんですよ」「そうだろうね(よくわかってるじゃないか)」