国王陛下の女王様






「鎮圧が終わったらそのまま借りてくよ、君の女王様」

明日の打ち合わせが終わった後、雲雀さんはそれだけ告げるとさっさと執務室を出て行った。明日は後始末は最後の方部下に任せて雲雀さんのお供かー。嫌じゃないけど雲雀さんと会話続かないんだよなーヒバード頭に乗せて寝てるだけだから静かにしてれば咬み殺されないし。甘いもの奢ってくれるし(そして雲雀さんのくれるお菓子は量より質でその質が半端ない)。ときに毎回思うのだが、雲雀さんは何で私の事を女王様と呼ぶのだろう。いつからかは覚えていないけど呼ばれる度に反抗していたのが嘘みたいで今では聞き流せるまで月日が流れているのは確かだ。

「貸すのはいいんですけど大事に扱ってくださいいね、俺の大事な女王様なんですから」

そしてボスも雲雀さんの女王様発言を否定しない、しろよ。泣かすぞ踏むぞ。つーか俺のってなんですか俺のって。毎度ツッコむの面倒になったんで放置してしますけどツッコミはボスの役目でしょ私どっちかというと突っ込まれる方・・・じゃなくって。いや確かにあなたの部下ですから私はあなたのものですけどいやいやそういう事じゃなくて。別に変な噂立っても立たなくても私はいいんですよ一部ホントだし大きな大問題になって後々大変なのボスなんですからね、って話が脱線した。
二人にからかわれてるのとか思ったけどボスならわかるがあの雲雀さんが私をからかうためだけにこう何度も人の事女王様って呼ぶのもなんだか変だ。

「クフフ、どうかしましたか、腑に落ちない顔をしていますが」
「「骸!」」

ボスとハモる。あれ?さっきまでいたのクロームだよね。びっくりついでにこの女装趣味の変態セクハラ大魔王から二メートル程離れておいた。

「おやおや、は相変わらず僕には懐いてくれないんですね」
「うっさいこの変態女装野郎!」
「女装とは失礼な、れっきとした幻術です。あぁ、クロームなら今日は笹川京子三浦ハルと一緒に買い物に行っています」
「人の心読むな!そして変態は否定しないんだな!」
「褒め言葉ですから」
「「褒めてねぇよ」」

今日はやけにツッコミが冴える日だなぁ、仕事してボス(仕事=ツッコミ)。

「今日のを集まりって結構大事だったんだけどなー・・・」
「それなら心配いりませんよ、沢田綱吉。明日の鎮圧には僕が参加しますので」
「えぇ!?雲雀さんと骸が!?」
「ちょっと待ってヤダ行きたくないわボス助けて明日の後片付け絶対終わらない!!」

あの二人が揃うなんて地獄絵図の方がまだましだしちょっと壊滅じゃ済まないよ殺し合いならともかく共闘なんてありえない二人セットで通った跡なんて草木どころかペンペン草も生えないわ!あ、でもそしたら掃除しなくて済むかもって・・・

「んな訳あるかぁぁあ!!」
「貴女はいつも煩いですね。それにしてもまた大きくなっていませんか?」
「へ?」

頭を抱えて明日に絶望していたら骸にむんずと鷲掴みにされた。
どこをって・・・胸を。
いつの間にか正面に来ていた骸の右手がブラウス越しに遠慮の欠片もなく私の左胸を揉みしだいてるのだ。目の前で起こる出来事に私の脳みそがフリーズして視界から入る情報を処理してくれない。私のおっぱいという名の脂肪の塊に骸サンの指が喰い込んでるんですけどちょっとどんだけ揉んでるの遠慮しろようら若き乙女の胸だろ大きくってそんな特に何もしてないんですけど・・・

「っきゃあああ!!」
「クフフ、いい悲鳴ですね」
「ちょっと骸俺のおっぱいになにしてんの」

大事なのは私じゃなくておっぱいか、ボンゴレ・デーチモ。
そこで死ぬ気の炎出すなちょっと骸も何応戦しようとしてるのここの書類破損したら困るのはボス(正確には獄寺さん)じゃないですかつーかいい加減胸離せ。 一瞬で間合いをゼロにしたボスはベリッと勢いよく骸から私を剥がして抱きかかえ、そのまま隣接している仮眠室に連行された。ちらりと視界を過ぎった骸は笑顔で手を振っている。あの野郎明日雲雀さんに咬み殺されてしまえ。

「はぁ、」

ベッドに私の身体を投げ出したボスは、そのまま私の腰をホールドした。訂正、腰に腕を回し抱きついてきた。私が身動き出来ないけど苦しくないギリギリの力をだったのでされるがままになっていたが、落ち着いたらしいボスが力を抜き、何を言うかと思えばまさかの溜息。

、無防備過ぎ」
「いや全身全霊掛けて拒絶してましたが」
「そうじゃなくって・・・」

のそりと起き上がりボスが私の上に乗り上げる、腰の辺りを跨がれ両手は頭の横に付かれた。顔が近い、さっき骸に胸を揉まれた時よりずっとドキドキする。

「ほら、ね」
「それは・・・ボス、だからですよ」

真っ直ぐに注がれる視線が急に恥ずかしくなって思わず顔を背ける。



耳元で囁かれる名前に、背筋が甘く痺れる。

「もう少し、俺のモノって自覚持ってよ、
「ぜ、善処・・・します」

耳に響くリップ音。耳の後ろから首筋にかけて落とされるキスに身体がどうしようもなく熱くなる。鎖骨からデコルテ、腹から腰へと落とされる唇に抗う術を私は知らない。打ち合わせ後に現場に向かう予定だったので、今日は普段のパンツスーツではない。カーキのシャツに七分丈のデニム、素足にサンダルと簡単な恰好だった。手を引かれ上半身を起こされるた。ベッドの端に座ると、足元に膝をついたボスにサンダルを脱がされ、右足の小指の食まれる。
時折ボスはこうやって私の身体を好き勝手に弄ぶ。キスをしたり抱きしめられたり不本意ながら胸を揉まれる事もある。かといって最後までコトに及ぶことはなく、唇にキスをしたり服を脱がしたり(捲られた事はある)しない。この時ばかりは私は叫ぶことも逃げ出すこともせずボスにされるが儘だ。これ以上進んでほしい気がするしそれが怖いと思っている自分もいる。それを決めるのは私じゃない。
この行為で思い知る。私は、ボスのモノだ。





予想通り鎮圧というレベルじゃなかった。嵐の守護者は不在ですよでよりによって今日なんですかこの嵐の去った後!ものの見事に瓦礫しか残ってないんですけどこれ片付ける身になってくださいよって今回の私は不参加に近い。部下に指示を出しすぐに此処を発つ雲雀さんに付いていかねばならないのだ。ブーイング?雲雀さんを前にわざわざ咬み殺されるような真似する部下に育てた覚えはありません(というか一度咬み殺されているので雲雀さんの前ではとても静かだ)。更に言えばクロームではなく骸が来たので意気消沈しているのもまた事実。おっさんは可愛い女の子がいた方が仕事が捗る。私は例外らしい(その暴言を吐いた部下は一週間禁酒の刑に処した)。

「雲雀さん、なんで私の事女王様って呼ぶんですか?」

移動中の草壁さんの運転する車の中、私はようやく長年の疑問を解消するべく果敢にも微睡む雲雀さんに話しかけた。雲雀さんはこちらに視線をやったものの、すぐに目を閉じてしまった。頭に乗せたヒバードが先に寝ていたので雲雀さんももうすぐ寝てしまうだろう。同じことをもう一度問えば煩いと咬み殺されるか車を追い出されるのでしない。さっきの問いにはまた答えてもらえないかもしれないけど。

「沢田綱吉が傅くのは君だけだろう、
「傅くってそんな・・・」

アゴで使ってるつもりはないんですけどそりゃドルチェは奢ってもらってますが。ボスいじめるのは楽しいですけどチョコラと部下の飲み代確保の為であってSっ気は無いですし。

「揶揄してるつもりはないよ」
「だから心読まないでくださいって・・・雲雀さん、それって」
「沢田綱吉が君に跪く所を見たから」

にやり、と獲物を前にした猛獣のような目で見ないでください!

「文句ならあんな場所で盛る彼に言うんだね」
「盛るって・・・最後までしてませんしボスとは一度もシた事ありません!」
「ワオ、生殺し?」

やるねぇ君もってそれ褒め言葉じゃないですから!





甘くても曖昧なまま熱くなれない。あともう一歩が踏み出せない。