(No.216 味見の条件 ←) 我に返ったバーナビーの顔は先程のウエイターより蒼白だった。 慌てての右手から手を離すと、すごい勢いで個室のドアまで後退る。 「すみません・・・車を用意しますので、今日はこれで」 「待って、バーナビー!」 逃げるように部屋を出ていこうとするバーナビーを引き止める。 「貴方とは同僚でいたいんです!」 「そう言って他の人の血を吸うの?」 「それは・・・」 言葉に詰まるバーナビー。その隙をついては一気に畳み掛ける。 「確かに私たちは同僚だけど、貴方はアポロンメディアの顔よでもあるのよ、もし私みたく暗示の効かない人に見つかってしまったらどうするんですか?」 「じゃあどうすればいいんですか?これ以上飢えたらまた今みたく貴方を襲いますよ?」 「構わないわ。誰彼構わず襲うよりずっとマシ」 「襲うって、」 声を荒らげるバーナビーに勝るともとも劣らぬ気迫を持つがワイングラスの縁を右手で握る。薄く口触りの良いグラスは簡単に割れ、さっきとは比べものにならない量の血がの右手を染め上げた。 「何をしているんですか貴方は!」 は手に残る破片を取り除き駆け寄るバーナビーの目の前に血に濡れた右手を差し出した。ビクリと身体を震わせ、硬直するバーナビー。右手を見て、それから正面に見据えるの一対の瞳を驚愕の表情で見つめる。 「バーナビー」 血が肌を伝う、傷口が熱い。痛みと他の何かで頭の奥がジンジンする。 「舐めて」 さっきみたく、さっき以上に。 「・・・後悔しても知りませんよ」 バーナビーは視線を右手に戻す。の右腕を取り肘まで流れ出した血を舌で拭う。指を舐め回された時よりも伝わる舌の感覚にぞわり、と背筋が粟立つ。 最後に見た瞳は飢えた獣以外の何者でもなかった。 この関係を望んでいたかどうかは分からない。言えるのは、もう後戻りは出来ないということ。 |