裏風紀委員の憂鬱






おはようございます〜。
並盛中の正門前に、やけに間延びした声が響く。

「本日から風紀チェック強化週間です〜、こちらで確認してますよ〜OKな方はこの紙をどうぞ〜。咬み殺されたくなければ肌身離さず持っててくださいね〜」

正門で呼びかけるのは三つ編みおさげに黒縁メガネの奇妙な女生徒。何故かセーラー服を着ているが、問題はそこではない。腕に装着された風紀と書かれた腕章を見つけた途端、登校した生徒は一人残らず彼女から遠ざかった。彼女はひらひらとただの紙切れにしか見えないものを手に持って振っていた。

「君と君にはコレあげる〜、あ、君はアウトだ〜明日直して来てね〜」

間延びした声とは裏腹にテキパキと服装チェックを行う彼女は一体何者なのか、風紀委員としても、一般生徒としても今まで見た事が無い。そして取締り強化週間にもかかわらず風紀委員長が不在なのだ。

「そろそろ門閉めちゃってください〜あとよろしくです〜」

配らせていた紙を他の風紀委員から回収し、遅刻者の対応を任せ、セーラー服の少女は一足先に応接室へ向かった。





「委員長〜チェック終わりました〜」

応接室にいたのは不機嫌そうな顔の雲雀恭弥。

、その馬鹿な振りするの辞めたら?」
「あら〜委員長、私馬鹿ですよ〜?」
「そうだね」

眉間のシワを一層深め、書類に視線をを戻す。その目の前では制服を脱ぎ出した。
セーラー服から並盛の指定制服へ、お下げはカツラだし眼鏡は伊達だ。別人になるのにほんの五分。風紀委員は、普通の女生徒へと変わった。

「女生徒の生着替えで反応しないなんて委員長実はホモですか?」
「咬み殺されたいの?
「遠慮させてください、これからHRなので」

間延びした口調も消え失せ、それでは失礼しますと一礼し応接室から立ち去る姿は優等生以外の何物でも無い。

裏風紀委員、
彼女はれっきとした風紀委員だが、その事実を知る者はごく僅かであり、教師に至っては誰一人知らない。それもその筈、秘密裏に任命されたのだ。あの風紀委員長、雲雀恭弥に。





話は一ヶ月前まで遡る。

「君、風紀委員やりなよ」
「嫌です」

即答、そして逃亡。何を隠そう(隠してないが)は中学にあがると同時に小市民して生きて行こうと決めたのだ。なのに風紀委員なんて目立つ事しなければいけないのだ。も必至だったが、雲雀恭弥も引かなかった。二人の追いかけっこは二週間程続くのだが、その際の攻防は別の機会にでも。ことの始終は省く、怖かったから。私たちを見守っていた草壁さんから言わせると、「珍しい」との事。あの雲雀恭弥がたかが一女生徒を捕獲するのに二週間もかかるなんて。

「咬み殺さない様に手加減してたからじゃないですか?」
「・・・まぁ、それもあるだろうな」

結論から言うと捕獲されましたけどね。正確には脅されましたけどね。

「コレ、君でしょ?」
「ひひひ雲雀様どうしその写真をお持ちに・・・!」
「ワオ、本物なんだね」
「な、何のことだか某にはさっぱり・・・」
「君じゃないんだったら、新聞部に渡しても問題無いね」
「!!!」

連日の鬼ごっこで落としてしまった生徒手帳を返してもらおうと涙を飲んで応接室に行ったら生徒手帳はあっさり返してもらった。ほっと一息風紀委員長は極悪非道じゃなかったよかったよかったなんて思った矢先にコレですよ!過去の遺物引っ張り出しやがって畜生雲雀恭弥!アンタ鬼か!

「僕の言いたい事、わかる?」
「・・・さっぱり」
「草壁、この切り抜き新聞部に持って「ああぁあ!委員長私風紀委員やりたいなーやらせてくださいやりゃいいんだろコノヤロウ!!」
「煩い、咬み殺すよ」

ワオ、理不尽。

「草壁、に指導しておいて」
「委員長、どちらへ」
「見回り」

話が終わるとお構いなしに応接室を出て行く。そして去り際に一言。

「大丈夫だよ。この写真は僕しか知らないから」

あーあいい笑顔波盛の生徒じゃなきゃ完全に黄色い悲鳴上がってたよマジで。つーか笑うんだね委員長。

「委員長が、笑った・・・」

アンタも初めてかい副委員長。





「委員長セーラー服着ていいですかー変装していいですかー?」「好きにしたら」