鬼の副長と女中











何かがおかしい。
真選組に女中として入った筈なのに、今、私は竹刀を握らされている。
勿論危ないので防具は身に付けているが、相手はマヨラーもとい鬼の副長と呼ばれるあの土方十四郎だ。
朝餉の片付けを終え、さて洗濯に行こうと思ったら突然のお呼び出し。自室に来いだなんて何かしました私?そりゃ思い当たることが一つや二つはありますけどさー。
買い置きマヨネーズにカロリーハーフ混ぜてるコトかなー。
タバコ煙たいから部屋に消臭スプレー(しかもほんのりフローラル)撒いた犯人だって知られたかなー。
山崎さんミントン誘った事ばれたかー。
どれも怒られるのは確実だが、現実はそんなに生優しくなかった。

「女にしちゃあ逞しい腕をしてると思ったらそういうことか」

セクハラですかコノヤロー。
ガチガチに固まる私にお茶を勧め(というか私が持ってきたんだけど)、開口一番がそれですかい。

「な・・・何の話でしょうか・・・?」
「型がしっかりしてたな、しかも竹刀でなく木刀をふって切っ先がぶれないとはな・・・」

アレかー!
朝餉の準備より早く起きてこっそり日課にしている素振りか!
夜回り組は気を付けてたからおそらく書類整理か何かの徹夜明けの副長に目撃されてしまっていたのだ。

「このご時世だ、護身用にしては上手すぎる。誰に習った?」

しかもこの人話聞いてないし!

「ち、父が道場を開いておりまして・・・」
「ほぅ、成程な」

あーでもあの時声掛けられなくて良かった・・・木刀に触れられなくて良かった・・・実はこっそり鉄棒仕込んでるなんて知られたらとんだ怪力だと思われてしまう(実際そんじょそこらの女性よりは力はあるが)。


「は、はい」
「今日の午後、道場に来い。女中頭には話は通してある」
「へ?」
「局長も承諾済みだ、お前の腕を見てみる」
「は?」

なんでなんでどんだけアンタ根回し早いんですか!?
見られたの(多分)今朝ですよ今朝!!

、返事は?」

ヤダヤダ素振り見られるまでなら良いけど絶対それじゃあ終わらないんだ試合なんぞ組まれてもブランクありまくりなのに勝負にならんて何が楽しくて天下無敵の真選組の副長サマは小娘にナニ竹刀握らせようとしてんの無理に決まってんじゃない!!

、返事」
「・・・はい」

まー逆らえるわけない。





そして、今に至る。
・・・泣きそう。

「局長・・・棄権していいでか?」
「いや、トシの次は俺だ」

えー。そんな楽しそうに言わないでください。 土方さん目がマジですよ確かに他に道場にいらっしゃる方は全員ノシましたけど。 思ったより腕なまってなかったわでもそろそろ限界だっつーの。一番隊特に隊長の沖田さんがいたら確実に死んでたなあの人強いしサディスティック星の王子だし今日見回りでよかったーなんて思った矢先、土方さん直々のご指名。

「久々だなぁ、トシのそんな顔を道場で見るのは」

ホント楽しそうそこのゴリラ。


「ハイィッ」
「手加減しねぇぞ」





あのー、私女ですが。

(→ No.218 同意のもとの・・・)