その日は本当にツいてない日だった。 ここ数日仕事も忙しく、徹夜明けに加え朝から何も口にする暇が無かった。おまけに生理二日目で下腹部がありえない位痛いし身体が重くて思うように動かない。本日最後となるブロンズステージでの仕事を終え、自宅のあるゴールドステージにたどり着いた時既に夜十時。夜食を作る気にもなれず行き先にレストランか軽く食べられる行きつけバールが選択肢に挙がったが、胃が空っぽ過ぎて逆に食欲が無かった。とにかく家に帰って眠りたい。 マンションは駅から少し歩くのにタクシーも捕まらず、結局無駄に体力を消費した。ようやくマンションにたどり着けば、エレベーターに貼られた故障中と書かれた紙。 思わず巫山戯んなと叫びたかったが、近所迷惑とこれから階段を登る体力を考えて(主に後者の理由で)止めておいた。鍵を握り締め罪も無い階段を睨み付ける。 ここまで来て。まさか最後の一段でヒールが折れるなんて誰が予想できるだろう。 もう、受身を取るのも面倒なんですけど・・・ 重力に任せた身体に、覚悟した衝撃は来なかった。 「おいおい、気をつけろよな・・・」 目を開けるとがっしりとした体躯の男に抱きとめられていた。身体を支える腕が青く発光している・・・NEXTだ。 「大丈夫か?」 「あ、はい」 青く光る瞳は真っ直ぐにを見ていた。 外れない視線に、居心地が悪く視線を外し身じろいだが、男の視線はに注がれたままだ。 「ありがとうございます。あの、そろそろ手を・・・」 「あぁ、悪ぃ」 支えて貰った手を放してもらい、自力で立とうともう一度身体をよじるがそれは叶わず。 脇の手を膝の裏に腕を支えられていた身体を抱き上げられ、踏み外した拍子に落とした鍵と折れたヒールまで丁寧に拾われた。そのまま落ちた階段をゆっくり上っていく。 「部屋、どこだ?」 「え、」 「送るぜ」 思わぬ申し出に見上げると。優しく微笑んでいた視線が合った。 どうしよう、そんな顔されても正直困る。 顔は好みだけど多分年齢がちょっと離れてるし万が一迫られても今日は二日目だし大丈夫だろう本当にまずかったら隣の人に助けを求めよう、多分悲鳴を上げれば来てくれるだろう、何といっても隣の住人はヒーローなのだから。気が付いたら彼の瞳の色が榛色に変わっていた。能力を発動していないのにも関わらず、人ひとり抱えていて足取りがしっかりしている。支える腕も相当鍛えられなければここまでにはならない筈だ。 ・・・って自分は何を冷静に分析してるのだろう。 「大丈夫か?」 「あ!はいっ!」 「そんな脅えなくたって何もしねぇって。その足じゃあ暫く歩けねぇだろ?」 「え、足?」 「まさか気付いねぇのか?」 身体をよじりヒールの折れた方の足を恐る恐る見ると、折れてるのではないかという位青く腫れていた。 視界で確認すると途端に痛くなるのは何故だろう。 手当てをしてもらい夜食まで作ってくれたお人好しな彼が、実はシュテルンビルトを守るヒーローでお隣さんの知り合いと言う事を知るのはもう少し先の話。 「バーナビー、私があの時あの善意と正義感のカタマリ男に貞操の危機を感じてたこと絶対に言わないでよね!」 「別に構いませんが。でも虎徹さん気付いてて次の日大分ショック受けてましたよ」 「きゃー!」 |