国王陛下の女王様






は自身の所属するマフィアの最高権力者の元へ向かっていた。本来なら彼のいる本館には守護者を始めとしたごく限られた人物しか入れず、彼女の様な下っ端構成員など近付く事すら許されないのだが、彼女は数少ない例外だ。

「失礼します」

執務室の中の気配が複数だと思ったら室内には三人の守護者と、目的の人物。は綱吉の正面まで歩み寄り、持っていた紙の束を彼の執務机の上に置いた。

「ボス、この間の報告書です」
「あぁ、ありがとう
「ちょっと待て

ではこれでと一礼して立ち去ろうとするに声がかかる。目をやると、眉間のしわを三割増に寄せた嵐の守護者がこちらを見ていた。他の守護者からも視線も集まる。

「何でしょうか、獄寺さん」
!アポなしで来るなと何回言えばお前は」
「いいじゃないですか。報告書提出する位でアポ取るのアホらしいんですよ」
「お前、此処がどこだか判って言ってんだろうな・・・」
「十中八九上司のいる部屋」
「十代目の執務室と言えボケェ!」

入室した時に守護者三人の視線を集めた時もそうだが、嵐の守護者に怒鳴られた時ですら彼女の言動に動揺は見られない。彼女位の立場の者なら、守護者から向けられる視線が複数の時点で緊張して声も出なくなるだろうに。ノックをして入室許可が出たのだから自分がここにいても問題無いだろう、位にしか思っていないのだ、彼女は。
彼女が動じない理由は二つ。一つはは地位が低いだけでボンゴレ・デーチモ直属の部下であること。
もう一つは、任務が主に守護者の事後処理であること。彼らとは何度も仕事を共にしているのだ。現場の引継ぎの為会話も多い。
幹部から実力を認められているのだ。本来ならそれ相応の地位が用意されているのだが、下手に出世すると事務仕事が増えて面倒くさいというあけすけな理由から、処理班班長という位置に甘んじている。その事実を知らない他の構成員からは実は幹部の誰かの愛人だの色目を使っただのと陰口を叩かれているが、本人は気にしていない。
綱吉としては色目位使って欲しいと思っているのだが、彼女がそれに気付くことはないだろう。

、この領収書は何?」
「必要経費です」

ただ、給料以上の仕事をしている自覚があるのか、特別ボーナスと言わんばかりに現物支給を求めたり無茶な要求を押し通して来る。ほぼ毎回。

「これはちょっと受け取れないなぁ」

ペラリと二枚の領収書をつまみ出す綱吉の手元を隣にいた獄寺が覗き込む。と同時にに向かって再び怒鳴り出した。

「何だこの飲み代は!お前一体何人部下持ってやがるんだ!九人じゃねぇのか」
「御存じの通り九人ですが」
の班は大酒飲みで有名だからなぁ」
「この金額を一晩で・・・もう一枚も何だコレチョッコラティーノ代って」
「私の主食です」
「チョッコラティーノが主食ってお前どんな食生活送ってるんだよ・・・つーかそれ位給料で賄え」
「えー」
「えーじゃねぇえーじゃ!」

綱吉だけだと押し切ることの出来る領収書が獄寺の助力で今回ばかりは不利になってきた。突き返された領収書を受け取り、どうしようかと思案する。隣で笑う山本は女性に優しいとはいえ、この様子を楽しんでるが助けるつもりはなさそうだ。となると頼りになるのは横のソファで寛いでいる男なのだが・・・助けを求めた時点で愛用のトンファーで咬み殺される。
普通なら。

「雲雀さん」
「何」

唐突に名を呼ばれ不機嫌を隠そうともしない雲雀に果敢にも近付く。ただでさえ多忙なのに呼び出され、挙句の果てにの登場で待たされているのだ。問答無用で咬み殺されてもおかしくないのだが、雲雀は彼女に危害を加える素振りを見せない。が雲雀に近付く時は、有益な情報を持っている場合が多いのだ。

「これどうぞ」
「ワオ」
!」
それちょっと待って!」
「Cランクですが、全て雲系です」

雲雀に渡されたのはリングだった、しかも三つ。

「今回処理した殲滅戦、回収部隊が撤収した後に隠し部屋が見つかって。そこにリングが隠されていたんです」

ボスに渡そうと思ったんですけど、領収書返されちゃったんで腹いせにプレゼントします。と付け加えるのを忘れずに。随分と豪華な腹いせだ。

「僕と取引するつもりなの?」
「まさか、雲雀さんの過度な破壊を止めて貰いたかったらSランク十個でも足りないと思ってますから。お時間取らせたお詫びを兼ねたボスへの嫌がらせなので気にしないでください」
「そう、じゃあ貰っておくよ」


気を取り直した綱吉に名を呼ばれる。声にボスの威厳を取り戻していたが、顔がまだ少し引き攣っていた。

「俺隠し部屋の話聞いてないんだけど」
「言ってませんもん」
「もんって・・・」
「その報告書には記載しましたし、発見されたリング及びボックスは精度系統中身全て確認済みです」

にっこりと、それはもういい笑顔で微笑む。これ以上何か言ったら不利になる事が目に見えているうえ、現物は未だ彼女の手の中。これ以上他に流されてでもしたらかなわない。

、その領収書頂戴」
「十代目!」
「ありがとうございます」

お邪魔しましたと部屋を後にする、嵐の後のような静けさに、どっと疲れが出た。改めて金額そ確認するが、普段と変わりなかった。一枚、二枚とめくって確認していく。

「あ」
「どうした、ツナ」
「領収書、一枚増えてる・・・」
「・・・」
獄寺の怒声は、屋敷を出たには届いていなかった。





「三人がいると思って少し強気に出たのが裏目に出たか」「あの野郎・・・」「ははっ、流石だなー」「沢田綱吉、いつまで待たせるつもり」「スミマセン雲雀さん!」