実はシャララが尊敬する数少ない業界人だったりする






正直、七つ差はでかい。
モチロンさんが若くてもよぼよぼのおばあちゃんでも愛せる自信はあるけど。問題はそこじゃなくて。

「寝ろ、コーコーセー」
「まだ九時だって、俺はもう少しさんに構ってもらいたいんだけど」
「これから写真の選別があるんだ、残念ながら構ってやる暇はない」

猫じゃらしはお気に召さなかったようだしな。と本気かジョークか区別しがたい一言を付け加えられた。
一週間前、合鍵を使って先にお邪魔していた俺が帰宅したさんを玄関で出迎えた時の事だ。「おかえり」「ただいま」のお決まりの会話のあと、何故かさんは靴を脱ぐ前に鞄をごそごそと漁っていた。何かと思いその場で待っていたら、すぐに取り出された猫じゃらしを目前でふりふりふられた。

「?にゃあ?」

首をかしげつつも俺はとりあえず思いついたセリフを言えば、さんは不満だったようでその猫じゃらしを靴箱の上にある花瓶に挿した。花が飾られないので猫じゃらしはいまだぽつんとさびしそうにそこに在る。本当にあれはなんだったんだろう。

「どんな写真?」
「明日も部活だろう?『真ちゃん』とやらを迎えにいくんじゃないのか?」
「土曜日だからいつもよりは一時間遅くて平気。ねぇ、大人しくしてるから俺にも写真見せて」

あの一件の後、俺はさんについて少し調べてみた。まず手始めにネットで検索したり写真部に聞いたが、知らぬ存ぜぬばかりで、これといった賞を取っている訳でも無さそうだ。そもそも職業はカメラマンで合っているのかどうかすら俺にはわからなかった。手がかりの雑誌にも彼女の名前は見当たらず。モデルが彼女を指名したのだから有名なのか、モデルのコネを使ったのか。思いついたものの、後者はありえないと思った。どんなに素人でもあんな写真を撮る人がコネを使うとは思えない。そういや。

『珍しーッスね高尾クンから俺に連絡くれるのって!緑間っちになんかあったんスか?』
「いや、真ちゃんがらみじゃねーけど」

モデル繋がりで何か知ってるかもしれないと、真ちゃんと同じキセキの世代で現役モデルでもある黄瀬涼太にコンタクトを取ってみた。

『涼ちゃん、って知ってる』
「・・・高尾っち、どこで彼女の名前知ったんスか?」

っち呼びになってるぞモデル様。さんの名前言っただけで何が起きた。

「いや、この前どこぞの紳士服メーカーがカジュアルライン出したって雑誌で特集組んでただろ?あのカメラマンがっていう・・・」
『それ知ってるッス!あれ俺も最終選考まで残ったのに他の仕事と被っちゃって!しかも決まったモデルがさんに撮ってもらいたいとかワガママ言ったら通っちゃったらしくてホント羨ましかったんスから!』
「そんなに有名なの?その、って人」
『まあ、有名っちゃ有名っスけど・・・俺らの業界でもさんの事知らない人いるのになんで高尾っちが知ってるんスか?あの人自分の撮った写真に基本名前載せないし』
「まぁ、色々あって・・・」
『ちょっとそれ色々じゃ済まされないっスよ、さん自分が撮った写真って知られるのホント嫌いで場合によっては契約違反とかになりかねないんスから!』
「マジで?」
『マジっス』
「・・・涼ちゃん、内緒にしてくれる?」
『は?』
「あれ、オレも写ってんの」
『ウソォ!?高尾っちそれずるいっス俺だってさんに撮ってもらったの一回しかないのに!!どーしてそれ羨ましッ』

ツー、ツー、ツー

ぎゃいぎゃい騒ぎ出したので悪いと思ったけど電話は切らせていただきました。すぐに来たメールに詳しく話して欲しいと書いてあったからとりあえずありのままを多少端折ったが書いておいた。そしたらお礼にと極秘でさんのもうちょっと詳しい情報を貰えました。
とりあえず、俺が思っていた以上に凄い人だという事はわかった。

さんの撮る写真は、群衆とか仕事してるとことか日常って呼べるものが多い。ただその普通が普通じゃなくて、おばちゃん達が集まって梅干し漬けてるとことか籠編んでるとことかなのに日なたはあったかそうで、おばちゃん達のおしゃべりが聞こえてきそうな。





さんって凄い人だったんだね」『そんなさんに惚れて近付ける高尾っちも相当っすけどね』