ゼロは何と掛けてもゼロだが、マイナスとマイナスは掛けるとプラスになる。 「人間は魔力がゼロか僅かのプラスが殆どで、マイナスはそうそういるもんじゃない、しかもそれが血縁者ならまだしも、赤の他人同士が繋がるのは本当に稀なことなんだ。しかも、必ず受け継がれる訳じゃない」 だから、双子達は受け継がれて居ないんだ。 僅かだが安堵が胸に宿る。自分と同じ道を弟達に歩ませたくない。 「、僕にその魔力を頂戴。そうしたら力を失った君のことも、君の大事な人達も守ってあげるよ」 抱きしめる腕に力が篭る。抜け出せないが、痛くないギリギリの力を保つ。 目の前を悪魔の紡ぐ約束を疑っているわけじゃない。 「、何なら君を食べてしまってもいいんだよ、僕は人の血肉を好んで食べはしないけど、ならきっと甘いんだろうね、髪ひと房、骨の欠片も残さずに食べてあげるよ」 そう言い、顔をうずめる首筋に舌を這わせ、人間のものより鋭い犬歯を当てられた。 肌にチクリと痛みが走るがそこが裂けることはなく、血は一滴も流れない。残虐と恐れられるこの悪魔は、何故か私を傷つけない。 「クロエ・・・」 忘れてはいけない、この男は、悪魔なのだ。 「くらえークロエー」 「姉ちゃんを離せー」 バタンと勢い良く自室の扉が開き、弾丸の様に子供が飛び込んできた。 「それは、何?」 「塩だぞー」 「牧師さまに聞いたぞー悪魔は塩が弱点でただれちゃうんだぞー」 「クロエー覚悟しろー」 実のではないが、兄に向かって勢い良く塩を投げつける双子。 塩はクロエだけではなく、抱きしめられている私にも勿論降り注いだ。 庇う様にクロエが私を覆う。頭からパラパラと白い結晶が降り注ぐ。 「・・・クロエ?」 動かず固まる彼に、思わず声をかけた。 「お前ら、イタズラが過ぎるぞ?姉さんの部屋が塩だらけじゃないか」 「クロエが退治できないぞー」 「牧師さまがウソついたー」 クロエはようやく私から離れ、双子を部屋から追い出す。 頭の軽く振り、塩を落とそうとするが取れないらしく、頭を掻きながらため息をついた。 「・・・何ともないの?」 「あの塩は多分、調理用の塩だ。天然の塩や法儀式済みの塩ならともかく、この位じゃ足止めにもならない」 「そんな大事な事を私に言っていいの?」 「大事だから言うんだよ、姉さん」 悪魔の弱点位知っておかないと、あっという間に食べられてしまうからね。 |