毒見役と十代目











あ、の、クソ女なんつー薬使ってるんだコレ数滴軽く炙れば充分なのに原液酒に混ぜるかフツー!

、気分は」
「・・・最悪」

この馬鹿少しは超直感働かせろ。
はベッドの上で毛布を被りミノムシ状態になった自分をさすったり水を渡したりとかいがいしく尽くしてくれている上司を心の中で罵倒した。声に出さなかったのは立場云々の問題ではなく、ただ単にが声を出せる程回復出来ていないから、こんな状態でなければ口だけではなく手も出ていたかもしれない。普段の彼女がそれをすれば解雇どころか彼の右腕に跡形もなく爆破されてしまうだろうが、原因は彼女の上司、沢田綱吉の他ならない。
今日、綱吉はボンゴレ・デーチモとして敵陣とは言えないが同盟を組んでいないファミリー主催のパーティーに参加している。はそこにに綱吉の付添という名目で参加した。付添など本来の仕事ではないと彼の右腕に対し駄々を捏ねたのだが、何かあってからでは遅いと要求を一蹴する右腕と、連れが女性であれば自分をこれまた別の意味で狙う輩が減ると遠回しに参加を強いる二人にが折れるのも時間の問題で。結果として役に立ったのだが、双方の要望を微妙に沿う形となったのもまたを苛立たせる原因の一環だった。
女除けにと綱吉が腰に手を回していたにも拘らず、一人の女性が彼に近付いた。それが今夜の主催者の一人娘であるが故二人も反故には出来ず容ばかりの談笑、そして勧められるが侭にワイングラスを受け取った。いくら酒に弱いと公言していても、受け取ってしまった以上、口を付けないわけにはいかない。

「ボス」

先程まで笑顔で機嫌の悪さを完璧に覆い隠していたが声色を変えた。袖を引き何かを求めるような上目使い。甘えた声でもう一度ボスと呼ばれると綱吉は目を細め、自分の持つワイングラスをの彩られた唇へと宛がった。

「ボンゴレ・デーチモ、何を・・・」
「あぁ、彼女はとても甘えたでね。俺の手からでないと何も食べてくれないんですよ」

こくりこくりとグラスの中身を飲み干したは、自分に渡されたグラスも綱吉に渡し、同じ動作を繰り返す。

「彼女がこのワインが気に入ったようですね、後で銘柄を聞いても宜しいですか?」
「え、えぇ。喜んで。何でしたら今度プレゼントさせて頂きますわ」
「それは光栄です」

がいくらか顔色の悪くなった目の前の女に視線を向け首をかしげたが、すぐに綱吉の胸に顔を埋める。その光景は傍から見れば仲睦まじい恋人同士がじゃれているようにしか見えなかった。

「貴方とももう少し話してみたかったが、この子が限界のようで、今日はこれで失礼します」

腕の中のに微笑みかけ、宛がわれた部屋へ向かう二人を止める者はいない。

「何で、効かないの」

取り残された女を震えさせたのは男に無碍にされたからでも急に吹いた冷風からでもなく、かといって自分が盛った毒薬に気付かれた怒りでもない。その毒薬を飲み干し平然としている意中の男の腕に抱かれる女への純粋な恐怖だった。
に宛がわれた部屋へ戻りは綱吉の腕の中から逃れるよに身じろいだ。手を放せば態度こそ変えないがやや足を速めバスルームへ直行した。綱吉は重厚な扉を閉め鍵を掛け彼女の後を追う。これから始まる光景は何度見ても慣れないが、自分には毒と知って飲ませた責任があり、それが彼女の役目だとしても見届けるのがボスの役目だと綱吉は思っている。それが我儘で自己満足であろうとも欠かした事は無かった。
胃洗浄を始めた彼女の背後に回り、ドレスのチャックをゆっくりと降ろす。ほどけた髪を後ろにまとめてから彼女の行為の妨げにならない様に脱がせる。こういった度に同じ事をしているので、も始めは嫌がっていたものの最近はされるが侭で、抗う素振りすら見せなくなった。こちらは汗ばむ白くまろい肩と肩甲骨の浮き出た無防備な背中、横からでもわかる重量級のバストにいっぱいいっぱいいだというのに。あらかた吐き出しひと段落した下着姿の彼女を包むシーツの下に白い肌が隠れているのを思い出し、再び身体の至る所に熱が篭る。


「ダメ、離れて・・・」

肌に触れられるだけでそこが爆ぜた様に熱い、布ずれの音すら快感に変わる。もっと触って、これだけじゃあ足りない。目を瞑ってしまえば欲望にに従順な身体が皮膚に伝わる感覚を一つ残らず快楽へと変える。毒に溺れてはいけない。目の前の男には絶対に感染させてはいけない。
薬の所為だとしてもこれは本当にマズイ。第一薬と名のつくものの所詮は人を狂わす毒。気化したものが彼を侵してしまえば毒味の意味が無い。

「ん、あぁっ!」

思考回路が持たない。焼ききれる前に、早く彼を遠ざけねばいけないのに・・・

、俺に全部委ねて」

耳元で囁かれる低い声に脳の奥が甘く痺れる。
その後の記憶が、無い。





「何だその格好、毒味がいいご身分だな」
「ボスが悪い、俺は何も悪くない」

屋敷に横付けされた車の扉が開けられる。そこから降りるのはこの屋敷で一番権力を持つ男。だが、その男は足を屋敷に向ける前に、自ら反対側のドアを開け、隣に座っていた女性を抱え上げる。
綱吉を出迎えた獄寺はボスの腕の中に大人しく収まる女性の顔を見て盛大に眉を寄せ、舌打ちをした。これならどこかの令嬢をお持ち帰りされた方がまだマシだった。
しかし何かがおかしい。
確かには口調こそ粗暴だが、綱吉に対してこんな態度を取る女ではなかったはずだ。毒味兼付き添いとして彼女をパーティーに同行させたのも、そのま主催者の屋敷に泊まる事も事前に把握していた。護衛に付けた部下達からは何も起こらなかったとの報告も受けている。
その中に彼女からの報告は、無かった。

「あはは、食べちゃった」
「食われた」
「え・・・十代目?」

顔色こそ変えないが不機嫌がひしひしと伝わるに対し、敬愛する上司は書類から逃げた時と同じような罰の悪い笑みを浮かべとんでもない事を口にした。
食べちゃったってそんな爽やかに言われても。毒ならではなく、彼女を?

「怒らないであげてね。彼女、毒味の役目はちゃんと果たしたから」

毒味の役目はって何だはって。
後日彼女からあげられた私怨混じりの報告書に書き直しを命ずることをしなかったのは、獄寺のなけなしの優しさだった。





「獄寺さんボスに食べられたのでその分ボスの休暇ください」「なにそれ!?」「・・・許可する」「えちょっとマジ?」