鬼兵隊隊長と真撰組監察方 4






(No.067 恋と愛の違い ←)




男の手に持たれた煙草が火のついたまま握りつぶされた。曖昧な返事で怒らせてしまったし、自分で言うのも何だがあの返答は怒りたくもなるだろう。問題は返事が曖昧な事ではなく自分も気持ちが定まっていないというところなのだが、果して自分を呼びつけた目の前の男は自分の意図に気付いてくれただろうか。

「ふざけてんのかテメェ・・・」

至って真面目です。

副長には申し訳ないが本当だ。
いつも以上に副長の機嫌を損ねてしまうのは、声が出ない分ひとつひとつの動作が大きくなってしまっているからだろう。必要なのは唇の動きだけなので身体で表す必要などないのに、どうしても音でしか意思を伝えられない人間に使っていたら身についてしまった。身に付いてしまっていた。

「隠してることがあれば今言え、そしたら切腹は勘弁してやる」

・・・高杉晋助について万事屋から聞いていたのと、本人を目の当たりにして、いくつか納得しただけです。セックスについては身体の相性はまぁ悪くなかったですし乱暴にされたのは本当に最初の数回だけです。生娘じゃあるまいし、情報得るために身体使う事は今までに何度かしてましたしたから、憎いとか恋愛感情が芽生えたとかそんなのが無いんですよ。

そこまで言って土方の表情を見ると、呆れを通り越したのか額に手を当て溜息を付いていた。

どうしましたか?

「何でもねェ」

あ、すみません身体の相性はどうでもよかったですね。それとももっと詳しく言った方がよかったですか?好きな体位とか感じやすい場所とか実は彼「お前が死ぬときは俺が直々に介錯してやる、いつがいいんだ?今か?今なのか?」

すみません調子乗りました。

からかいすぎで殺されては適わないので、土下座しながら謝った。沖田隊長ではないので本気の副長から逃げ切れる自信は無い。



はい。

「来週、お前の調べた情報を元に討入りが決まった」

鬼兵隊のヤマですね。

「そこで決着を付けてこい」

・・・はい。





「真撰組だ!大人しくしろぉ!」

監察方とはいえ、討ち入りに参加する場合もある。理由は様々で、人手が足りなかったり、隠し部屋があった場合の対処などが多い。

、行け」

今日は違った。単独行動など本来なら減給ものだが、今回だけお許しを貰っている。ここまで育ててくれた家族を私は裏切れない。

「久しぶりだな」

一番見晴らしのいいところにその男はいた。下では部下が戦っているというのに余裕の笑みを浮かべている。成功しようが失敗しようが、この男にとって一つでも多くのモノが壊れればそれでいいのだ。

「何しに来た」

晋助。

「声が出ないのか、かわいそうに」

血を吸った刃と共に一歩ずつ近付く、私はその場から一歩も動かず、ただ彼が近付くのを待った。

「死ぬのが怖くねェのか?」

ふるふると首を横に振る。刃を首筋に当てられ、誰のものかわからない血が首を濡らし刃の冷たさを伝える。

「もう一度だけ聞いてやる。何しに俺の前に現れた」

問いには答えず、ただ、両手を広げた。
見開く高杉の目、やがて眉間に皺を寄せ舌打ちを一つ。首から刃を外し、一振りして血を落とし鞘へ戻す。空いた両手でいつかの時のように私の腰に両腕を回す。力強さに負けその場に座り込んでしまった私の心臓に耳を押し付ける男を見て、頭を抱えるように抱きしめた。

「晋助」

生きる場所が違っても、傍にいることすら許されなくても。それでも。

「また、こういう風に抱きしめに来てもいい?」
「・・・気が向いたらな」

愛しい、という想いに嘘はつきたくない。





」「はい」「誰にも知られるなよ。勿論、俺にもだ」「・・・はい」