年下の恋人






私はこの二十程歳の離れた男の恋人だ。
男は結構な有名人で、どの位有名かというと、帽子や眼鏡無しに街へ出かければあっという間にサインや握手を求める人だかりが出来、女性からは黄色い悲鳴が上がる。現役と呼ばれていた時代からもう十年も経つのに今だ彼の人気は衰えなかった。彼の職業が正社員であれど、そこいらの会社員などとは比べて貰いたくは無い。
彼の職業は、ヒーロー。
KOHの座に君臨し、歴代ヒーロー達の中で唯一素顔を晒していた彼に私生活などあって無いようなもの。彼とバディを組んだ人の娘がいつだかこっそりと教えてくれた、バーナビーが父親に洩らした言葉。唯一安らげる場所は自宅ではなく、小さなアパートの一室だったという。





女の所か?
最近酒の席にも顔を出さず、熱心に通い詰める相方にいくら聞いてもはぐらかされ、挙句の果てには知らないの一点張り。ようやく聞き出したのはヒーロー業を復帰して暫くしてから。何度目かの再結成を祝う酒の席に(勿論未成年は帰らせたが)強引に連れて行き、かつての仲間と結託し、潰れる寸前まで飲ませそれでも口を割らなかった彼が、店を出たた所でようやく口を開いた。

「虎徹さんだから、教えるんですよ」

愛しい、僕のたからもの。
そういって連れて行かれたのは、シルバーステージにあるアパートの一室。

「おかえりなさい、バーナビー」
「ただいま、

満面の笑みを浮かべ彼を抱き締める女性は、屈んだバーナビーの頬にキスを落とす。満足そうに笑うバーナビーが彼女を抱き上げ、そこでようやく彼女は彼一色の世界からもう一人の存在に気付いた。

「おきゃくさま?」
「えぇ、僕のバディの虎徹さんです」
「じゃあ、ごあいさつをしないと」

彼女は身を捩り抱き上げられた身体を地面に降ろしてもらい、俺の正面に立った。

「はじめまして虎徹さん、ともうします」
「はじめましてちゃん、鏑木・T・虎徹です。よろしく」

背の低い彼女と目線を合わせるためしゃがんで手を出すと、小さな手がそっと差し出された。握手をするのに、指二本あれば十分な手。

「バーナビー、ちゃんって歳いくつ?」
「ちょっと虎徹さん、失礼ですよ。初対面の女性に年齢聞くなんて」
「いやぁ、つい気になっちまって」
「きにしないでください、虎徹さん。私はことしでやっつになります」

にっこりと笑う彼女はおそらく本当の年齢を伝えた。外見に対して妥当な年齢。姪っ子がいるという話も聞いた事は無い、それだったら今紹介する時に言っている筈だ。と、なるとこの二人の関係は・・・

「よっぱらいさん、おふろはあしたにしてもうねましょう?」
も一緒に行きましょう?」
「おふろにはいってからすぐにいきます。さきにねててください」
「わかりました、待ってますね」

バーナビーは彼女の頬にキスを落とし、ふらふらと寝室へ歩いていった。残された二人に僅かな沈黙が訪れる。

、ちゃん?」
「はい、どうしましたか?虎徹さん」
「その・・・ちゃんとバーナビーって、どういう関係?」

虎徹は意を決して自分の娘より幼い少女に尋ねた。自分の中でおおよその答えは出ていたが、はいそうですかと認めるにはあまりにもあまりな事態だ。

「こいびとです」
「・・・そっか」
「バーナビーもわかってるんです。このかんけいがおかしいことも、だれにもしられちゃいけないことも。だから私、すごいひさしぶりにバーナビーいがいのかたとおはなししました」

彼女は、今なんて。

「久しぶり?」
「かれにひろわれてから、いちどもこのへやからでたことがないんです」

ちょっと待ったそれって。

「まさか、誘拐・・・?」
「いいえ、私にはみよりがいません。虎徹さん、バーナビーはつよくてやさしいけれど、とてもよわい人なんです」
「・・・弱い人、か」

彼女の口から彼に対する評価にその言葉が含まれているとは思わなかった。彼女の眼差しを受ければわかる。これは彼女の本心であり、俺も少なからずそういう面が奴にあると思っている。

「虎徹さん、私、バーナビーがすきなんです」

父親としてではなく、男の人として。
歳よりもずっと大人びた台詞を紡ぐ彼女は虎徹に微笑んだ。
バーナビーが今まで隠しに隠していた理由がようやくわかった。二十も歳の離れている恋人同士、しかも女性の方は身体的にまだ子供だ。おいそれと公表出来る事実ではない。二人の将来を考えると、ここで止める事が最善だ。

「虎徹さん?」

黙り込んでしまった虎徹に、心配そうには近付き顔を覗く。

「・・・これ以上人に言わないようにってバニーに言っとかねぇとだな」
「虎徹さん・・・」
「大丈夫だ、。きっと二人なら、乗り越えられる」





http://sixpeople.web.fc2.com/tb/『後味の悪い話』提出作品の二人。