女王様のある優雅な一日






彼女の朝は早い。
カフェオレとクロワッサンという何故かフランスチックな朝食を食べるために、少し遠目のカフェまで行くからだ。
職業柄、朝早くから仕事が入る事はほとんどなく、午前中は大抵デスクワークをこなしている。彼女の部下は、一切書類仕事をしないので、すべて彼女がこなしている。その代り部下たちは休みを申請しない限り彼女の命令ひとつで集まれるようにしている。紅一点ではあるものの、男勝りな性格と指揮官としての能力で今まで内部でもめた事は無い。マフィアとしてと云々を獄寺に説教されたこともあるが後始末を担当してる人間にそんな事まで求めるなと食ってかかったこともある。獄寺曰く、彼女は中身は仕事が早く証拠も残さず優秀なのだが、見た目で嘗められるのだ。ジーンズによれたシャツでボンゴレ本部を歩いていたらダイナマイトが飛んできた事がある。

「テメェここをどこだと思ってやがる!」
「家でくつろいで何が悪い!」
「アホか此処はボンゴレ本部だぁあ!」

ちなみにどちらも正しい。
彼女の住処は、ボンゴレ・デーチモの寝室の隣だったりする。二つの部屋を繋ぐ扉があり、有事の際には開く様に仕掛けが施されている。鍵と、炎で開くそれは最新のセキュリティを使い、一度でも開けたら記録も残るようになっている。本部にボスがいる時に留守にしがちな守護者が一人もいないという事はまずないが、彼女は最後の砦で切り札なのだ。
ボンゴレ・デーチモの脱走に付き合うのもある意味仕事なのかもしれない。彼女の事をただの掃除係としか認識していない下っ端や同僚にとやかく言われる事もあるらしいのだが、本人がケロッとしているので周りは一度問題提起したが、気にしない方がいいのかもしれない。
ほぼ二人の脱走先となるこの街のカフェ、レストランは二人の素性を知っていて、彼女専用のカトラリーを置いている。ボンゴレによって治安の守られている街だからこそ出来る事なので、それを知っている二人の脱走は大抵この街中で終わる。ただ、彼らはマフィアに協力しているというより、単純にお得意様である彼女の我儘を聞いているという感覚だ。この街で飲食店に従事している人間で彼女を知らない者はいないというのも別の意味で恐ろしい話だが。
本音を言えば秘書にして専属の護衛にしたいんだと酔う度にボンゴレ・デーチモが親しい身内に零しているのはここだけの話である。
彼女の本職は主に夕方から夜中にかけて活動する。黒に身を包み部下を呼び、未だ死体が温い時間に音もなくあらわれ、闇に紛れ不都合な事実を綺麗に消していく。それはマンションの一室であったり古城であったりと場所は様々だが、雲雀恭弥。彼の仕事の後始末に彼女が指名されることが多い、仕事の速さや性格というものもあるのだろう。時々出張に連れて行かれる事もあるが、必ず他の守護者が本部に長期滞在している時だ。自分の仕事を全うするために公安に手を回せる掃除屋などいない。本来そこまで行くと上の役目なのだが、恐ろしい事に彼女は一人でそれをこなす。本当なら守護者補佐まで行ってもおかしくない実力を持っているのだが、彼女は誰の誘いにも乗らない。曰く、現場が好きなのと給料と仕事の割合が一番良いのだと言っていた。余談になるが、彼女の消費する菓子代を含む食費の殆どは、何だかんだ言って経費になっているので、それを給料として換算すると中々の額になる。時々経費に部下の飲み代も入っている事は他の部下に絶対に知られてはいけないと経理担当が零していた。





さん、また飲み代も経費に入れてましたね」「えー、だってこの前ボスの書類手伝だったから」「!それ言っちゃダメだって!」「クフフ、相変わらず仲がよろしいようで」