「静雄さんにあまり構わないでください」 放課後の屋上に呼び出され、告白かと思ったらこんな話。残念。 面と向かって俺に申告する勇気のある目の前の彼女は、あの平和島静雄の従兄妹だ。しかし肝心の渦中の男はこの血の繋がりを知らない。周囲の親族が周到に隠しているからだ。 その選択は正しい。あの平和島静雄と血の繋がる人間は、否応無しに彼に影響されてしまう。 目の前にいる少女、は自分とあの男との関係を偶然、知ってしまったようだ。 知ってしまった彼女は驚愕し、狼狽しただろう。同じ来神高校に通う彼女は、平和島静雄を危険な存在と認知している。さぞ、恐怖をだっただろう。 しかし、彼女は誰にも言わなかった。 無知は罪である。 しかし故意に隠された事実は結果として間接的にを守っていたのだ。親族の気持ちも痛いほどわかる。自分の為に、今まで隠されていたことに腹を立てるほど彼女はもう子供ではなかった。 だからこそ、彼女は折原臨也に伝えたのだ。 彼女に伝えられる前から知っていた情報ではあったが、その繋がりは、平和島静雄が知らなければ使い道が無かったので、今まで放っておいたのだ。 今までは。 「何故それを俺に?でも・・・俺の邪魔をする奴がいると困るんだよね。君は邪魔をするのかい?ちゃん?」 「折原さん、お願いします」 彼女の真摯な眼差しが俺を捕らえる。確かにこうしてみると、不愉快なあの男の面影はある。整った顔、雰囲気は弟の幽によく似ていた。 違うのは人を疑う事を知らない、自分の感情を語る真っ直ぐな瞳。 彼女は平和島静雄の血縁という事を差し引いても興味を引く人間だ。 「まあ、君が身代わりになるんだったら考えてあげてもいいけどね」 こう言えば優しく愚かな彼女はきっとこう言うだろう。彼女は出来ないことはしないが、出来る事ならしてしまうのだ。 「何をすれば良いですか?」 ほらね。 「何でもする?」 「私に出来る事なら」 「手、出して」 例え呼ばれたからとはいえ自分に危害を与える可能性のある男にの家に大人しく付いて来ちゃダメだよ? 家に入れる前に一応忠告はしたが、首をかしげたのは危機管理能力の低さゆえか、何か切り札を持っているのか。 大人しく両手を前に差し出すに、学習能力の無さを感じる。 「これ、飲める?」 「・・・毒ですか?」 「大丈夫、死にはしないよ」 毒かと問われた事は否定しなかった。しかし臨也の言葉を聞いたは戸惑う事なくその薬を口に入れ、鞄からジュースを取り出し嚥下する。 「オレンジジュースで飲んでも変な反応起こさないですよね」 「・・・まぁね」 まさか躊躇せずに飲むとは思わなかった臨也は少し驚いた。さすが従兄妹と言うべきか。彼女も何処かおかしい。 「これ、何の薬ですか?」 「順序が違わないかい?まあ、それはただの睡眠薬だよ」 「そうですか」 「ねえ、ちゃん、寝てる間に俺に何かされるとは思わないのかい?」 「思って、無かったです」 「・・・何故?」 「静雄さんに危害、もしくは苦痛を与えるとしたら、それは静雄さんに私という存在を知らせ、価値のあるものに仕立て上げてから私を傷つけるはずです」 「言うねぇ、ちゃん」 「少なくとも私は、私に出来る事を・・・した、だけ・・・です」 言いたい事を言うだけ言って彼女は無防備にも眠り出した。眠らせたのは俺だけど。 「オーケー、今回は君に勝ちを譲ろう」 眠る彼女の顔は穏やかだ。忌々しいほどに 「ただし今回だけだ。次は無いから覚悟しなよ、ちゃん?」 愛してあげるよ、君も、人間だからね。 |