「さんは虎徹さんのどこが良くて付き合ったのですか?」 「顔。」 「・・・そうですか」 満面の笑みで話の中心の恋人に聞かれたら確実に泣かれる事を言い切った彼女は、ワイルドタイガーを追ってアポロンメディアに転職した自他共に認めるアポロンメディアヒーロー事業部の敏腕マネージャー。 事あるごとにイチャつこうとする虎徹に対し、公私を一刀両断する彼女。就業時間中の二人しか見たことが無ければ、倦怠期どころか付き合っているとも思えない。 因みに今はティータイムとして十分程度の休憩を取っている。虎徹は賠償金の件で呼ばれている。彼女はマネジメント能力が高く、こういった休憩も必要に応じて取るので事務処理速度が上がっている。 「いいんですか?虎徹さんに付いていないで」 「私が行ったところで何かが変わるわけでもないし、恋人がああいう場所にいたら不謹慎に思われて彼の印象が悪くなるわ」 それよりも、と彼女は言葉を続ける。口が綺麗に弧を描く。 「貴方、私と虎徹の関係なんて興味なかったのに。どういう心境の変化かしら」 「興味を、持ってみようと思いまして」 「バディを知ることはいい事だわ、バニーちゃん人と関わるのが苦手でしょう?」 克服しようとするのは何より何より。 うんうんと頷くに知ったふうな口を聞くなと言いたいところだが、彼女は知っているのだ。 それこそ、虎徹にすら言っていないことを知っているので、時折バーナビーは彼女が恐ろしく感じる。 「私と虎徹の付き合いはそこまで長くないのよ、だって初めて知り合ったのは、彼の奥さんが死んだ頃だったのだから」 最初は彼の役に立つために頑張ったわー。私の一挙一動ですら彼の評価に関わってしまうんですもの。眠れない、それでもヒーローは辞めないっていう虎徹の為に泊まりこみで食事の管理をしたこともあったわ。 「そしたらね、疲れちゃったのよ、私が」 ヒーローが一人で成り立つ仕事だとは思っていない。スポンサー、メディア、事業部、ファン。周りが支えてこそ、初めてヒーローはヒーローになれるのだ。 「一番近くで支えてたからかな?私が居なくても他の人が支えてくれるてことに気付いちゃったの。有給貰って一週間休みを取ったのよ」 「それは、虎徹さんに内緒でですか?」 「ええ」 一番近くで支えていた彼女が、いきなり居なくなったらそれは彼も驚くだろう。 「あの時の虎徹の慌てっぷりは忘れられないわー」 何度も鳴るインターホンに直樹もようやく重い腰をあげ、覗き穴を玄関の扉を開けばそこには真っ青な顔をした虎徹が立っていた。 「会社、辞めるって?」 「え?」 辞める?誰が、どういう事?まさかアッサリ有給取れたのって実は有給と言う名のクビだったのか!?突然の話にが二の句を告げないでいると虎徹は肯定と取ったようでギリ、と歯軋りが聞こえた。 「俺は認めねぇぞ!」 吠えるように叫び、を強く抱きしめた。 突然の衝撃に身構えることもできず、肺が圧迫され咳き込んでしまう。それでも虎徹はを離そうとはしない。 「なぁ、。これからも、俺のこと支えてくれないか?」 お前がいないと、お前じゃないと駄目なんだ。 肩を掴まれ、剥がされる。ようやく虎徹と目が合った。 泣きそうな、置いて行かれた子供のような目をした彼に、私は・・・ 「っていうかそれが告白だったんですね」 「流石バニーちゃん!イイトコ突いてくれたわ!」 「・・・どういうことですか?」 「私もそれが告白とは思わなくってね。イエスと言ったのはいいんだけど、まさかそこで虎徹に恋愛感情があるなんて知らなかったのよ」 「え、じゃあ・・・」 「私は虎徹の事、マネージャーとして支えてたけど、虎徹は私に公私共に傍に居て欲しかったみたい」 実際、虎徹に襲われるまで気付かなかった自分もだいぶ鈍感なのだが、バーナビーにそれは言わないでおく。 逃がしはしないと抱き締めた腕が、愛を紡いだ唇が、私を欲しがるその瞳が、今もなお私を捉えて離さない。 |