初めてチャリアカーで学校に来た時、俺だけ先生に呼ばれた。まぁ当然と言えば当然だったので部活とホームルームの間に大人しく職員室へ向かった。真ちゃんは何食わぬ顔でお前が何かしたのだろう人事を尽くしている俺には関係ない事なのだよと言いやがり一人で先に教室へ行ってしまった。いや、どう見てもお前の所為だから。 「高尾、今日乗ってきたアレは緑間がらみか・・・」 「えぇまあ、ハイ」 「・・・そうか」 緑間の奇行とそれを阻止した場合の不可抗力としか呼べないが確実に彼が原因で生じる甚大なる被害に、既に慣れてもとい諦めてしまった先生達は大きく溜息を付いた。 どうやら俺が呼ばれたのは注意でも緑間の制御でもなく、今後のチャリアカーの置き場所についてだったらしい。今日は用務員さんに来賓用の駐車場に停めるように言われたのでそこを使わせてもらっていたが、明日以降職員用の駐車場の空きを提供してもらった。 こんな乗り物はリアカーがラッキーアイテムである今日だけだと思っていたが、我がエース様は存外その乗り物を気に入ってしまったようで。今回ばかりは先生方の読みが当たったが、まさかこのまま卒業まで間借りする羽目になるのだが、今の俺には想像のつかない事だ。 「・・・何で?」 そんなチャリアカーの隣の駐車場は空いていた筈だが、今日は明らかに職員のものではないゴツいバイクが鎮座していた。 「おい、どうした」 後から来た緑間が立ち止まる自分に声をかける。それから俺の視線の先、チャリアカーの隣を見て物凄い嫌なものを見た時と同じ顔をした。 「帰るぞ、高尾」 一気に不機嫌になった緑間に驚いたが、それよりもバイクを見てに対する疑問が浮かんだ。このバイクの持ち主が秀徳の卒業生だということを高尾は知っているが、学校ともバスケとも一切無縁の場所で出会っている。知己だとしても歳が離れすぎている。第一、嫌悪するということはそれだけ緑間が持ち主を知っているということだ。 「和成?それに真太郎じゃないか」 「・・・お久しぶりです、さん」 「ちょ、真ちゃん何そのすっげぇ嫌そうな顔してるのに丁寧な態度!つーかさんと知り合い?」 「黄瀬がらみでな」 「あー、そっか涼ちゃんモデルだもんね」 「高尾こそ何故この人を知っている」 「ちょっと、ね」 曖昧に濁したら訝しげに視線を向けられた。どうやら緑間はさんの事を嫌っているというより近寄りたくないらしいって俺からもにじにじと距離置こうとしないで! 帝光時代に彼女と何かあったのだろうか、ちょっといやすごく気になる。ろくに会話をしていないので推測でしかないが態度からしてみたら涼ちゃんと一緒に写真を撮られたとかそういうことかもしれない。隣に並ぶエース様は帰りたいオーラを駄々漏れにして早くリヤカーに乗り込みたそうにしているが、さんに会えない考査期間にこの偶然は逃したくない。 しかも二人とも整った顔をしているからまさに両手に花。ただし緑間を選ばないと今後の俺の学校生活に確実に支障が出る、主に部活で。 「じゃ」 しかしあっさり去られるのも悲しいモノがある! 「ちょっと待ってさん!久々に会えたのに」 「これから仕事だ、それに『真ちゃん』が寂しそうにしてるぞ?」 「な!」 「さん!」 反論しようとして出来ないしかも俺のカバンを掴んで離さない緑間は珍しくデレ全開で、それを振り払えないでいる間にさんはフルフェイスのヘルメットをかぶりバイクに乗りエンジンを嘶かせた。ひらひらと手を振りながらあっという間に姿が見えなくなってしまった。 「高尾」 あ、ヤバい。 「お前の写真を撮ったのは、あの女なのだな」 このあと緑間の家で勉強する予定だったのにマジバで俺の尋問が始まった。いつ呼んだのか涼ちゃんが混じり更に黒子と火神がやっきてひと波乱起こるのだが、それはまた別の機会に。そうでないと俺の心臓が持たない。 彼女相手に策を練るだけ無駄で、今は完全にベクトル彼女の片思い。 走っても走っても追い付かない、駆け引きどころか考える暇すら与えてくれない。 |