朝餉の後、女中のひとりが土方の部屋にやってきた。声をかけると返事の代わりに障子を開け、隊服をきっちり着込み準備の整った土方が出てくる。決して優しくない視線に臆する事無くその女中は、幼く見える笑みを浮かべ土方に話しかけた。 「副長、少しよろしいでしょうか」 「今から見回りだ」 「すぐに済みます」 「、後にしろ」 「今です、そこに正座してください」 口調が強い。鬼の副長にそこまでさせる人間など真撰組には数えるほどしか、それこそ女中など目の前にいる彼女一人だけだろう。最も、怯えるような女であれば恋仲になどならなかっただろうが。渋る副長を強引に正座させ、も正面に座る。ひとつ息を吐き、は機嫌の悪くなった土方をまっすぐに見つめる。 「何の話だ」 「マヨネーズの消費量の件です」 「あ?」 「完全に絶てとまでは言いません。半分に減らしていただけませんか?」 「無理だ」 「副長」 「、お前はマヨネーズの素晴らしさをわかっていない」 から反論が出ないことをいい事に、土方はマヨネーズについて語り始めた。 急いでるんじゃなかったのかよ。物陰から思わずツッコミを入れそうになったのは沖田だ。 本日の見回りの相手が土方と知り、自らのサボりタイム確保のため部屋にバズーカでも思い立ってここまで来たのだが、わずかに開いた障子の隙間からの会話の方が面白そうだったので、思わず聞き耳を立てていた。 「っつーことでさぁ」 「あぁ、成る程」 留置所に一泊していた銀時に説明する。こういう事は人数が多い方が楽しい。 そうしている間でも、マヨネーズ談義はまだ終わらないようだ。 「副長はそこまでマヨネーズを愛しているんですね」 「わかってくれたか、」 「マヨネーズへの愛は受け取りました」 あれ、変な方向に話まとまってない?嫌だよマヨネーズカップルなんて見たくねぇよつーか折れちゃうの?そこ折れちゃうの? 驚く二人に気付くことない土方。はさらに言葉を続ける。 「それでは副長、これは恋人からのお願いなのですが」 そういっては微笑んだ。それはもう綺麗に。いつもははにかむ位しか笑わないの笑みに、土方も見惚れたいのに嫌な予感しかしない。 「今、私にマヨネーズを語った時間と同じだけ、私への愛を語っていただけませんか?」 確実に今、空気が凍った。 見事に固まった土方、「では私はこれで」と笑顔のままその場を去る。 「あーあーあ、土方コノヤローやっちまいやがって」 「多串君ったらちゃん怒らせちゃったの?馬鹿だねーそんな時は『ベッドの中で同じ時間だけお前の事愛してやるよ』位言えばいいのに」 「旦那・・・それはちょっと」 「銀さんサイテー」 「酷いなぁ二人ともってちゃん!いつからそこに!」 「土方さんが固まってから」 「いや、そうだけどさー・・・」 もいつもの優しい笑みに戻っていた。除き見二人にはどうやらお咎めはないらしい。 「沖田さん、銀さん。土方さんにトドメ刺したいんで今の一部始終おもしろおかしく吹聴してくださいね」 覗き見二人が思わず固まる。 確かにお咎めは、無かった。 |