重いからこそ独りで背負う











「何故船長さんが此処に残っているのかしら?船の様子を見に行かなくても?」
が言ったんだろう?何もされなければ何もするなって。それにアイツらなら俺がいなくても何とかするだろう」
「私の所にいる必要もないでしょう?」
「女一人に大勢の男が押しかけてくるなんて卑怯な真似をする奴らなんだ。俺一人増えたところで奴らに文句は言わせねぇさ」
「・・・覇気は出さないでくださいね。面倒になるので」

昨晩結果、昼の薄暗い酒場にとシャンクスは居た。二人は酒を飲む訳でもなく、会話に興じている訳でもない。ただ、待っていた。この島にとって、そして彼等にとっての招かれざる訪問者を。
暫くして酒場のドアが開く音が響き、開店前の酒場に男達が足を踏み入れる。彼等は皆一様に同じ制服を着用し、一歩前を歩く男のみが自前のスーツに身を固め、背中に大きく正義とかかれた白いコートを羽織っていた。
彼はシャンクスを見つけると忌々しげに舌打ちをするが、捕らえようとする様子はない。

「あら、珍しい。海賊を目の前にして捕まえようとしない海軍もいるものね」

嫌味を言いながらくすくすと笑う。彼女の目の前で諍いを起こし、街に、民に万が一傷を付ければ、彼女によって屍にされる事を彼等は理解していているからこそ目の前の男に手が出せない。はそれを知っていてからかっているのだ。第一、四皇"赤髪のシャンクス"を相手にするには味方があまりにも少なすぎる。も解っていてそれには触れない。

「それは貴方が作られた不問立の所為ですよ・・・それにいま我々に用があるのは貴方です、中将
「そう呼ぶのはやめて頂戴、その肩書きは捨てたのよ」
「でしたら拾って戴きます。今回が最終通告です。我々と共に海軍本部へお戻り頂けない場合、手配書が作られる事になります」
「あら、それは困るわ。自由でいられなくなるもの」
「でしたらお戻りを」
「それも困るわ、自由でいられなくなるもの」
「っ!中将!」

叫ぶ海兵、おそらく将校の身分である男に向かい、躊躇う事無く自らの獲物を突き付ける。彼女の冷たい目に、男は声を無くす。周りの部下もの動きに付いていけなかった。

「さっき言った事が聞こえなかったの?その肩書きで呼ぶな、とはっきり言ったつもりなのだけど」

覇気では無く、只の威圧感に気圧される男には尚言葉を続ける。

「センゴク元帥並び大将達に伝えなさい。貴方達にどうにか出来る程風は優しくない、とね」
「・・・返事は明朝まで待つ。心変わりを期待している」
「命令を受けないと動けない小物の遣いなどで私の気持ちなど変わらないわ」
「貴様言わせておけば・・・!!!」
「少将!落ち着いてください!」

刀を抜きに斬り掛かろうとする男を部下達が必至になって抑える。

「海軍将校ともあろう人間がそうやって女の言葉ひとつで逆上してどうするの?私を斬る?貴方にそれが出来るのならやってみてもいいけど無駄よ。刀の切っ先すら私に届く事無く貴方は死ぬわ。そうね、万が一私を殺してその後はどうするの?"カゼカゼの実"の能力者が海賊の手に堕ちるよりはマシかもしれないけど、少なくとも貴方の首は飛ぶわ。そして私が死ねば"お気に入り"はまた荒れる。お気に入りの島が此処だけだなんて思わないでね。海軍基地も置けない様な小島の争いなんて貴方達海軍本部は歯牙にもかけないでしょうね」

初対面でがシャンクスに見せた笑みは、彼女にとってまだ生温い部類に入るようだ。覇気では無いが明らかな敵意を持って浮かべられる笑みに、横から様子を見守っていたシャンクスも思わず背筋に冷たいものが走る。女だからと甘く見ていたつもりは無かったが、自らの身を狙う海軍、海賊から逃げ続けて尚、いくつもの"お気に入り"と呼ぶ島々をたった一人で守っている強さを、再認識させられた。















「少し喋りすぎたわ。あれ位で熱くなるなんて、私もまだまだ若いわね」
「若くて美人なのは否定しないが、貫禄だけは十分だと思うんだが?」
「一応褒め言葉として受け取っておいていいのかしら」
「そうして欲しいな・・・それよりどうするんだ?
「此処で騒ぎになる前に海に出るわ。ログは溜まったし、これ以上私が此処にいると島の人間に迷惑がかかってしまうわ」

彼女は強い。強いからこそ、傍に置きたい。

、俺の船に乗れ」

初めて会ってから、この台詞を何度彼女に言っただろう。諦められなければ、連れ去ってしまえばいい。それでも、彼女から船に乗るという言葉が欲しかった。
は何も言わず、ただシャンクスを見つめる。その表情には何の感情も浮かんでいないようでいて、激情をひた隠しにしているようだった。
再び二人しかいなくなった酒場に、静寂が訪れる。















持てる者の孤独



このままだと私達、開店準備の邪魔になりますね」「ああ・・・そうだな」