「、俺の船に乗れ」 「遠慮します」 「俺のことが嫌いか?」 「嫌いじゃないですけど好きでもないですよ?」 「・・・そうか」 「女性なら誰でもよろしいのでしょう?」 「いや、お前がいい」 「あら、船長さんたら素敵な口説き文句」 「そうか?なら俺の所に来い」 「あら、お決まりの口説き文句」 「お頭、楽しんでる所悪いんだが・・・」 「俺は真面目だ!」 「あら、これはこれは副船長さん、今日もいい男ですね」 「・・・どうも」 「何!?ベック!今から俺とをかけて勝負しろ!」 「でしたら船長さん負けてください」 「・・・そんなに俺が嫌か?」 「嫌じゃないですよ」 「じゃあ、俺の船に・・・」 「でも好きじゃないですよ?」 「アンタら、人の話を聞いてくれ」 赤髪海賊団がこの島に来てから三日。 その間は酒場の二階、いつもこの島で泊まる部屋を拠点に島の復興作業に勤しんでいた。夜は宿代代わりにと酒場に下りて酔っ払いの相手をしている。シャンクスは毎晩彼女を口説いては、彼女に乗船を断られていた。 「いい加減にしたらどうだ?お頭」 からシャンクスを引き剥がしたベックマンは、カウンターまで連れて行き、腰を下ろさせた。 「いや、俺は彼女の"気まぐれ"を待ってるだけさ」 「・・・はこの海で海軍にも海賊にも所属しないでたらめな位置にいるが、そのでたらめを押し通す通る強さを持っているんだ。それにカゼカゼの実の能力者が海賊に渡ったと知れたら海軍が黙っちゃいねぇぞ」 「それこそ押し通すさ」 ニヤリと笑うシャンクスに、思わずこめかみを押さえてしまう。 「ああ、でもこんなに楽しいお酒は久しぶりだわ」 は楽しそうにテーブルへ乗り、酔っているのにキレイにくるり、一回転してみせた。今日は普段とは違い、昼間シャンクスが強引に送ったスカートを着ていたので、すそがふわりと持ち上がり、歓声が上がる。 「お礼にイイコトを教えてあげましょう」 「海軍がこの島に近付いていることか?」 「あら、ご存知でしたのね」 「オイ、何でそれを早く言わねぇんだ!!」 途端に船員から上がる野次。この事実を知っていたのは目の前にいる男。あとは微動だにしない副船長という所だろう。途端に先程とは違う騒がしさが酒場を占める。 「お頭!どうして俺達に黙っていたんですか!」 「今聞いただろう?それでいいじゃねぇか」 「遅いです!」 「じゃあもう一つ。こっちはイイコトというよりお願いですが。何かされなければ何もしないでください。それが私に言える最上のアドバイス」 「どういう意味だ?」 「私が争いが好きで争いが嫌いだから。かしら?」 シャンクスは顎に手を沿え考える。自分達は海賊だから従う理由などない。しかし彼女に仲間になって欲しいし、なによりこの島は彼女の『お気に入り』だ。が何を考えているのかまだ完全に把握出来ていないが、彼女の言に従った方が得策だろう。 「いいだろう、信じるぜ」 「ありがとうございます」 「お頭!」 「何だ?俺の決定に異論があるのか?」 仲間を見回すシャンクスに、水を打ったように場が静まった。 本来なら海軍に永遠に保護される筈のカゼカゼの実の能力者。この能力を持ったまま海軍を離れるということは、海軍を敵に回し、海賊を筆頭とした海を航海する人間から狙われるという事だ。それを十分に理解していたからこそ、は広大な海を孤独に生きてきた。 「何だ、俺に見惚れたか?」 いつの間にか隣に座り、の顔を覗き込むシャンクス。話は付いたようで、酒場には変わらぬ賑わいが戻っていた。 「そうね、貴方になら惚れてもいいかもしれないわ」 「そうすりゃ楽になるだろう?」 シャンクスはの背負っているものの重みに気付いている。だからこそ、船に誘ってくれているだ。 「・・・私は面倒よ」 隣の男にしか聞こえないように小さく呟く。そんなにシャンクスも声を落とし、答える。 「ああ、そんでもって強情だ」 「足枷になるわよ。今まで以上に狙われるかも知れないわ」 「それこそ今更だな、俺達は海賊だからな」 「風は、誰のものであってもいけない」 「それは誰が決めたんだ?」 は思わず息を呑む。 「お前の力だ。お前が好きに使えばいいだろう」 シャンクスが優しく笑みを浮かべながらを見つめる。この男が四皇と呼ばれる訳が今更ながら理解できた。器の大きさが違う。 「海も風も、誰のものでも無い。確かにそうかも知れねぇが、それはお前にも言えることだ。、お前も誰のものでも無いんだ」 |