お気に入りには手を出すな 風に嫌われ船は進まず 彼女に切られて命を落とす 「春島か・・・花見で宴だな」 「お頭、あんまり騒ぎを起こさないでくれ。あの島は確か"気まぐれ"のお気に入りだ」 「ああ、知ってる」 「彼女は・・・」 「海軍を抜けたカゼカゼの実の能力者だろ?その能力と"気まぐれ"故に海兵ですら一握りの人間しか顔を知らない。海賊で無いからか手配書も無ェからな」 ニヤリと笑うシャンクスに、ベックマンは溜息を吐いた。 これ以上興味を持てば、シャンクスはきっと彼女を探し始めてしまう。願くは、彼女が島にいない事を。 「一週間前、海賊がこの街を襲って来たんだ。だがどうだ、その海賊達は別の島で一人残らず殺された」 「一人だけ息があったんだがそいつも昨日死んだらしい。死ぬ間際まで狂った様に彼女の名前を何度も呼んでいたそうだ」 上陸し、町で一番大きな酒場に赤髪海賊団は向った。すれ違う人々は海賊から一様に目線を逸らす。少し荒れている様子を見ると、最近海賊にでも襲われたのだろうか。 酒場に入ると客の視線がシャンクスたちに集まる。気にせずシャンクスが奥のカウンターにいた店主に向かい、"気まぐれ"について聞きたいんだがと口に出した途端、周りの客の目が一斉にシャンクスに集中した。 容姿を問えば具体的な特徴は挙がらないものの彼らは口々に彼女をほめ称え、性格を尋ねれば口を揃えて"気まぐれ"と答えた。 「気をつけなよ、彼女は気まぐれで海賊だろうが海軍だろうが気にいらなければ背中に背負う二本の剣で切り捨てる」 「このまま古巣にも盾突けば札付きになるのも時間の問題なのにな」 「でも彼女は捕まらないんだ、いつも風のようにやって来て気が付いたらいなくなる」 「案外この島に来てるかもしれないな」 「なら来てたぞ?昼間広場で子供達と遊んでたから、もう来るんじゃないか?」 その声の主を筆頭に他にも目撃者が名乗り出た。 八百屋で果物を買い頬張りながら町を歩いていた事、新しく植える花は何にしようか町長と話していた事など聞くと、とても海賊を全滅させた同一人物とは思えない。 そういえば、と一人が付け足す。 「アンタらが海賊な事も島に来る事もは知ってたよ」 彼女は地獄耳だからな、大抵のことは知ってるのさ。 シャンクスは男達の話を聞きながら、彼等が先程からカウンターの端をチラチラ気にしているのに気付いた。 そこには白いシャツ白いズボンを纏う長い黒髪の女がいた。脇には二本の剣が無造作に置かれている。 いつの間に居たのだろう、自分達がこの店に入った時にはいなかった。 すぐ傍に行き目前に彼女の後ろ姿を捉えてもひどく存在感が無い。 しばらく背中を見つめるが、無遠慮に注ぐ視線に気付いている筈の彼女が振り返らない。 「・・・アンタが、か?」 彼女がそうだと直感が告げる前に問う。 女はくるりと振り向き、こちらを見上げる。途端に露になる圧倒的な存在感。細いが女性らしくメリハリのきいた身体。上げた顔は街を歩けば十人中九人が振り返り、きっと残りの一人は彼女を見た衝撃で動けなくなってしまうであろう。彼女はシャンクスに微笑むが、それは決して柔らかくはなく、敵を挑発させるような嘲笑。 「始めまして、"赤髪"のシャンクス」 「アンタが、"気まぐれ"か?」 「はい」 「俺の所に来ないか?」 「お頭手ェ早っ!」 挨拶もろくにせずシャンクスはを勧誘した。あまりの展開の早さに思わず船員から容赦ないツッコミが入る。 「イヤ」 「コッチも即答かいっ!!」 笑顔のまま一蹴するにもツッコミが入った。 |