「ねえ、先輩、どうして?」 「聞かないで」 「嫌だね。満足いく答えが聞けるまで何度だって聞いてやる」 「止めて、聞きたくないわ」 椅子から立ち上がり、そのまま教室から出ていこうとするを見逃す程俺はお人良しじゃない。自分も立ち上がり彼女へ手を伸ばす、強く引くと反動で彼女の体がすっぽりと収まった。強張った身体から震えが伝わる。観察していたから知っている。同性にすら不意に触れられるのを嫌う彼女にとって、たとえ年下とはいえ異性に抱き締められるのが恐怖でしかないことを。 「どうして先輩は人間が嫌いなんですか?」 「それがわからないから心を通わせる努力をしてるの。私だって人間だから人間を愛せるかもしれない、愛したいのよ!」 口調は強いものの全身がカタカタと震えている。いつも俺とシズちゃんの喧嘩を仲裁し正座させ説教する威勢のいい生徒会長の姿は今や影も形も無い。 それに努力で成せるならはとっくに人間を愛せるようになっている。彼女はあんなにも周りの人間から愛されているというのに。 「じゃあ、俺の側にいなよ」 「何を、いきなり・・・」 「俺は人間を愛してやまないから。そんな俺を見てたら人間を愛せるようになるかもしれないだろう?」 「・・・あなたの愛は、解りにくくて不器用なのよ」 愛することすら出来ない人間にそんな事言われたくないね。 俺の腕から逃れようともがくにそう耳元で囁いてやったら、彼女は硬直して動かなくなった。 |