勿論他校生に弁償してもらいます











「では、次の議題に移ります・・・」

放課後、予算会議の為に生徒会と各委員長、部長が集まり会議室を借り会議をしていた。それ以外の生徒は部活に勤しむか帰宅している。
一見何の変哲もない平和な日常に見えるが、この来神高校にそういうありきたりな日常は存在しない。
言うなればこれは嵐の前の静けさ。

「会長、何か質問は?」
「ありません、他に意見が無ければ各委員会の予算編成はこのまま進めていきます。次に部の予算編成を行いますが、会計より前年度との相違を説明させていただきます」
「はい・・・」

ドゴォン

の隣にいた会計が席を立つと同時に響いた破壊音。誰もが椅子に何か不具合があったのかと思ったが、音はもっと遠くから聞こえた気がする。続いて聞こえる怒声により音の原因が室内ではなく、外から聞こえたものだと判明した。
ああ、また彼か。
雄叫びと共に聞こえる破壊音。それと微かに聞こえる野太い悲鳴。来神高校でもはや日常と化した非日常の訪れに方々から溜め息が聞こえる。あまりに頻繁に起こる非日常にもはや誰も動じない。

「会長、行かれますか?」
「暫くしたら収まるでしょう、一日で三回止めに入る身にもなって頂戴」
「すみません・・・」

非日常を日常に戻すことは出来ないが、更なる非日常への移行を食い止めることは可能だ。一口に可能と言ってもそれを実行し、成果を出せる人間は現在来神高校に籍を置く者の中で一人しか存在しない。
しかしそんな人間でも流石に一日に三回目となる仲裁は乗り気でないようだ。

会長、ゴールポストが空を飛んでいます」
「会長、グラウンドにヒビが入りました」

今度はパキリ、という音がの手元から聞こえた。何事かと全員が彼女へ意識を向けるが何のことはない、手に握られていたボールペンが真っ二つに折れているだけだった。しかしそれを見た途端、一瞬で部屋の空気の体感温度が下がる。窓の外の騒ぎを見ていた者もこの学校で最も権力を持つ彼女の静かな怒りを肌で感じ、誰もが瞬時に視線を逸らした。触らぬ神に祟り無し。

「会計、被害総額を算出しておいてください」
「はい」
「副会長、制服からどこの高校か割り出しておいてください」
「了解しました」
「今日の会議は明日の昼休みに持ち越します。部長のみ手元の資料を持って此処に集合してください」

彼女に逆らえる者など居るわけが無く。
襟を正し背をまっすぐに伸ばし颯爽と廊下を闊歩するに怯える者、見惚れる者と含む意味は違えど彼らの視線は全ての後姿に注がれていた。










彼女が彼らを止めるまで、あと、七分。
彼女が彼を見つけるまで、あと、十二分。
彼女が恋人を見つけるまで、あと・・・
彼女が恋人を叱るまであと・・・。