生徒会長、。 新羅に言わせると成績優秀、眉目秀麗。生徒、教師陣からの信頼も厚く、名実共に来神高校いちの権力者であり人格者。折原臨也の高校生活における第二の障害。 天涯孤独で現在池袋のマンションに一人暮らし。彼女のマンションに仕掛けた盗聴器は二十四時間以内に彼女自身の手によりことごとく撤去される。特定の異性、友人共に無し。告白される事数度、基本穏便に断るが、相手が不用意に近付くと平手打ちで拒否。男女平等に接する所を見ると男性恐怖症ではないし、物の貸し借りをすることからも潔癖症ではない。 知れば知るほど底が見えない人間、それがだった。 「最近周りが騒がしいと思ったら折原君だったのね」 「何の事でしょうか、先輩」 「目的は何?」 放課後、生徒会室へ。 すれ違い様呟かれた言葉は自分に向けてのものとすぐにわかった。振り向き彼女の後姿を見つめるが、何事も無かったかのように歩き去る所からすると、話の内容は放課後まで明かさないつもりだろう、まあ、解ってはいるが。 生徒会室は彼女が人払いをしたらしく、通常なら業務に追われる役員がいるが今日は彼女一人が椅子に座って待っていた。呼ばれた理由が解らない、そんな風に言っても彼女は自分が調べられていた事に確信を持っている。取繕う必要などなかった。 臨也の口の端が持ち上がる。彼女は危険人物である自分とわざわざ二人きりの空間を作ってくれたのだ。自分が優位に立っている、浅はかで愚かな過信を持つ彼女に敬意を称し、臨也は自分の目的を語った。 「俺は人間を愛してるんですよ、人間の全てを。だから人間の事を余すことなく知りたい。つまり、先輩の事も知りたいんですよ。全て、ね」 「あまりいい趣味ではないわね。それで、私の事は解ったの?」 「いいえ。だから、これから知ろうと思います」 はふと教室の外に人の気配を感じた。しかも一人二人なんて生易しい数ではない。 「皆、先輩の為に集まってくれたんですよ?」 「あら、非力な平和主義者にこの人数はちょっと酷いんじゃない?」 「それだけ皆先輩の事が好きなんですよ」 それじゃあ、頑張ってくださいね。 臨也の声を合図に学年問わず、男子生徒がぞろぞろと生徒会室に入ってくる。中にはバッドや鉄パイプを持ってる者もいたが、の表情は変わらない。 「学業に不必要な物は持ち込み禁止なんだけどね・・・あら、折原君は見学?」 「ええ、先輩を余すことなく観察するためにここにいますよ」 助けて欲しい時は言ってくださいね。なんて周囲の生徒達を煽った張本人が楽しそうに笑いながら教室の隅に移動した。 「書類を片しておいてよかったわ。バラバラになったら大変だもの」 でも制服だからお手柔らかにね。 ため息を一つ、それでも尚余裕の彼女に男子生徒が一気に襲い掛かった。 「折原君、感想は」 「人格者の化けの皮が剥がれましたね」 「あら、的確な返答」 折原臨也はたかだか女生徒一人を黙らせるだけに、男達が武器を持ち、大人数で一気に襲い掛かった理由をようやく理解した。彼女は平和島静雄のように力がある訳でも強靭な肉体を持つわけでもない。が、彼女は持ち前の頭脳を使い、持ち前の反射神経と持久力を武器に、的確に敵を潰していった。 生徒会室に残るのは臨也とのみになった。臨也はバタフライナイフを、は細長い針を互いの首に突きつけていた。 「その武器は何ですか?」 「たまたま持ってたのよ。あんまり使いたくないんだけど、持ち歩いているからつい、ね」 「学業に不必要では?」 「本業に必要なのよ」 細い奇妙に折れ曲がる鈎針、それはいわゆる『七つ道具』と呼ばれているもの。 今回の収穫は多い。人格者の皮を被る彼女の本業を知れた事。 それともう一つ。ナイフをしまい、彼女も鈎針をしまった所を狙い、彼女の隙を突き手首を掴み自分に引き寄せる。 「っ!」 「また遊びましょうね?先輩」 身体の距離をゼロにして臨也がの耳元に囁くと、彼女が今まで見せなかった動揺が走る。その結果に満足した臨也は今度こそ彼女を解放し、生徒会室から出て行った。 残されたのは、自身を強く抱き締め肩を小刻みに震わす。 「アハハ、見つけた」 臨也は笑っていた。自分が思ったより彼女は強い、強くて、愛しい。その上最後の最後で、彼女がひた隠しにしていた欠点を見つけた。 |