再会と言うにはあまりにも遠すぎた











「竜ヶ峰帝人君、私は君の秘密を知っているよ」

声をかけられ振り向く。学校から池袋の雑踏を家路へ向かって歩く帝人の隣に見事な黒髪を風になびかせた女性が現れた。正臣や杏里と別れた後の事で、周りには誰もいない。普段はもっと人気のある場所であるにも拘らず、だ。
突然の事に驚いた帝人は足を止め、隣に並ぶ女性の顔を見つめた。

「初めましてと言うべき?それとも久し振りと言うべきかしら?」

中性的な顔立ちの、女性にしては背の高い彼女は、誰が見ても美人と呼ばれる部類に入る。一度見かけたら決して忘れないであろう。が、帝人には見覚えは無かった。何故、彼女は自分の名前を知っているのだろう。

「君の話に乗り、君に知識を与え、活動する直前に連絡の途絶えた人物。と言えば思い出して貰えるかな?」

顔見知りでないとすればパソコンの前ならどうだ。ネット上では顔はおろか性別すら解らない。過去のチャット仲間だとすれば。先程の彼女の言葉と合わせると思い当たる人物が一人だけ脳裏に浮かぶ。

「まさか・・・貴方は・・・いえ、貴方も・・・」

推測は当たっていたようだ。彼女は少し悲しげに微笑んだ。

「こんな私でも覚えていてくれたんだね、ありがとう。あの時の事は逃げ出したと思ってもらって構わない。今更だと思うかもしれないけど、私は君に償いに来た。もし君が望むなら・・・君が『ダラーズの創始者』として私に何か望むのなら、私は私の持ち得る全ての力で君の剣にも盾にもなろう」

その為に日本へ帰って来たんだ。そう心の中で付け足しながら。
あの日、偶然見つけてしまった。東京、池袋に存在する色を持たないカラーギャングの存在を。ネット上で動くそれに潜り込んだ先で自分を阻んだのは、自分が作ったプログラム。幾らか改編されていたが手に掛けたものを間違うはずが無かった。彼に教えたプログラムは生きてそこに君臨していたのだ。『ダラーズ』を守る砦として。
飛び出さずにはいられなかった。今更自分に出来ることなど無いのかもしれないが、それでもその組織は成長するのが異常な程早過ぎた。

「今は知人の所に世話になっている。連絡が取りたければここに掛けてくれ」

女性の懐から取り出された一枚のメモ。書かれているのは、携帯の電話番号とメールアドレス。
渡されたメモに視線を落とし、そしてゆっくりと彼女へ戻す。自分はまだ、彼女を知らな過ぎる。

「あの、お名前は・・・」
。巷では『開錠屋』と呼ばれているわ」

開錠屋。その言葉には聞き覚えがあった。以前正臣が「池袋に『開錠屋』が帰ってきた」と言っていたのを思い出す。平和島静雄と折原臨也の戦争を止められる数少ない人物。どんな人物かは正臣も知らなかったらしいが、まさかこんな美人な女性だったとは。

「また会えることを楽しみにしているよ、竜ヶ峰帝人君」

挨拶代わりにその場のさよならのためのキスを彼の頬に落とす。触れただけで真っ赤になってしまった純情少年を見ると、もて遊んだ感じがした。悪い女になってしまったのは、恋人の所為にしておいて、はその場を去った。