が帰国して数ヶ月が過ぎた。 池袋の開錠屋が戻ってきたという話は思った以上に早く広がり、臨也を介して定期的に仕事が入るようになった。理由としては外国へ行く前のを知っている、彼女の腕前を知っている人間が多いという事。彼女は高校生の頃からこの生業で生きてきたので、日本を離れていても池袋での知名度は高かった。勿論その時期の彼女を知らない人間もいるが、それは帰国早々の件、あの折原臨也と平和島静雄を止めた挙句路上で二人を正座させた女として一気に知名度が上がった。 池袋を歩いていれば声をかけられ、の本業を知っている人間はキーを閉じ込めてしまった車の開錠などを求めてきた。もその程度ならと笑顔一つで応じる。彼女は池袋に戻ってきていた。 そんな穏やかな春、池袋にちょっとした事件が起きた。『ダラーズ』の召集、初集会。 『ダラーズ』、それは池袋を根城にしたカラーギャング。チームカラーが無色な為、誰がメンバーなのかも特定できない不確かな集団。 が帰国した理由を臨也は知らない。は帰国直後に臨也に創始者の名前を訪ねたが、結局は聞かなかった。臨也は何かしら気付いたかもしれないが確信を持たしてはいけない為、それ以降その言葉をは口に出さなかったし、自身も独自に調べることもしなかった。 「何も出来なくても、ただのエゴだと解っている。それでも私は君に会わなくちゃいけないんだ」 はビルの屋上から池袋の街を見下ろす。夜の十一時を過ぎたというのに眼下には人が溢れていた。の目線の先には彼女と同じ位の歳であろう女性と、高校生。 も初集会の場にいたのだ。彼女はダラーズのメンバーではなかったが、独自に持つ情報と臨也の様子から何かが起こる気がしていた。静雄がダラーズのメンバーであると知り、何か動きがあれば知らせるように予め頼んでおいて正解だった。 正面には黒バイクと呼ばれる都市伝説が自分と同じようにビルの屋上から下の様子を窺っていた。彼は私に気付いたようだったがどうやら敵とは認識されずに済んだようだ。 「竜ヶ峰帝人君、君を見捨てた私を許してくれとは言わない」 彼の発案に乗ったのはいいが本格的に活動が始まる直前、はある理由でネットの繋がらない場所へ行ってしまった。戻ってきた時には彼しかいなかった。彼からしたら、自分も逃げた人間なのだろう。 「それでも君が『ダラーズの創始者』である限り、世界中の全てを敵に回しても、私は私の持ちうる全てを使い君の盾となり剣となろう」 その言動が懺悔にもならないただの自己満足だとは知っていたが、それでも呟かずには居られなかった。彼女は、その為に池袋という街に戻ってきたのだ。 『ダラーズ』を捨てた、『ダラーズの創始者』として。 |