「契約を、しようか」 目の前の男がそう言った。 「、君に人を愛するということを教えてあげるよ」 「折原くんのメリットはいくつか思い浮かぶけど、それを私が拒むとは思わないの?第一、私にメリットが・・・」 「は人を愛したいんだろう?」 核心を衝かれた。 一生治る事の無い病のようなものとして半ば諦めていた私の隠し続けた願望を、この男はいとも容易く見つけて引きずり出した。 「確かに俺に有利な事の方が多いかもしれない。来神高校一の権力者の傍にいれるし、が俺に不利なことをすることも無くなる。ただし、それはが俺を愛してくれたらの話だけどね」 「私が、折原くんを愛するの?」 「今のにとってその可能性が一番高いからね。今まであんなに触れられることを拒んできたのに、俺が触っても大丈夫になってきただろう?他の人間はどうか知らないけど、少なくとも俺に対してははそこまで許せちゃってるんだ」 先程から臨也の右手はの左頬に添えられたままだ。彼の顔がに近付く。目も瞑れずに硬直したが、彼の唇はの空いている右頬にちゅ、と音を立てた。頬から唇が離れても、二人の距離は近いままだった。 「はいつも理性で自分を保っている。その余裕が打ち砕かれる位俺を愛してもらいたいんだ、そうしたらきっとは誰にも見せた事の無い本性を俺に見せてくれる。それを俺は見たいんだ」 「・・・悪趣味ね。人の本性を曝させるなんて」 「前に言っただろう、俺は全ての・・・シズちゃん以外の人間を愛しているんだって。の本性も見てみたいし、それも愛しいんだよ」 「随分と歪んだ愛情をお持ちで」 「今までを愛した人間はだけを愛してたけど、俺は他の人間も同じように愛している。は俺に愛されながら、俺の愛し方を見れるんだ。普通の人間ならこんな所見れないだろう?」 目の前の男の愛はどこか歪んでいる。歪んでいるからこそ、私に甘いことばを囁きつつ、他の人間を愛すると豪語できるのだ。確かに私にも彼にも不確定なメリットしかないが、それでも、彼に触れられても嫌悪感が以前よりも無くなったのは本当だ。 先程から距離の変わらない臨也の整った顔が人を見下したようにではなく、愛しい者を見るような優しい微笑みでを見つめる。ああ、この男はこんな顔も出来るのか。どこか遠くでそんな事を思いながら、は臨也のキスを目を閉じて受け入れた。 「契約成立って事でいいかな?」 「・・・一つ聞いていい?」 「どうぞ、」 「折原くんは、私に愛されたいの?」 少し驚いたように目を開く臨也は、やっぱり笑った。今度は馬鹿な質問をしたという感じで、私を笑うかのような笑顔で。それでもいつも何か企んでいるような見下した笑みでは無かった。 「当たり前だよ、愛してるんだから」 もう一度触れるだけのキスをされた。それから耳元で「今度から臨也って呼んで」と囁かれた。 |