「ねぇ、二人はやり残した事無いの?」 喫茶店に三人の女子高生。 三人とも異なる制服を身に纏っているが、そのうち一人は近くの高校の制服だった。首を横に振るう彼女達を見て、先程の言葉を発した来神高校の制服の少女が僅かに口の端を上げる。 「私、やりたい事があるの」 でも一人じゃ怖くて、と俯き弱々しく声を紡ぐ一人の少女の言葉を信じてしまった二人の少女は数時間後、その言葉を信じた為、死ぬ程怖い目に合わされた上、死がどれほど恐ろしいものか思い知らされる事になる。 「会長、何処に行ってるんですかねぇ?」 「野暮用、って言って抜け出してた。放課後会議ある事忘れてるなあの人」 「もう今日は解散でいいんじゃない?」 折原臨也は外で生徒会室に仕掛けた盗聴器で生徒会長の不在を知ったが、ひとつ納得いかない所があった。彼はを先程見かけたのだが、品行方正で知られる彼女が制服のままで池袋を歩いていたのだ。しかも、見知らぬ制服の少女を連れて。学校帰りなら理解できるが、この時間になってから繁華街へ向かう彼女達に興味が湧いた。 「命拾いしたね、シズちゃん」 どうやって平和島静雄を殺そうか練っていた計画を明日に持ち越し、臨也は三人の後を追った。 コインロッカーに預けていたのだろう、私服に着替えた彼女達は街に溶け込んだが臨也は見失うヘマはしなかった。だからこそ驚いた。裏では暴力団が絡んでいるというクラブに三人が足を踏み入れるのを見てしまった。 (あの生徒会長があんな場所に足を運ぶなんて・・・) の弱みを握れる。脅して駒に出来るとは思わないが自分の邪魔をする者を消すチャンスが来た。そう信じて、自分でも興奮が抑えきれなかった。 「折原臨也君じゃない。こんな時間にこんな場所にどうしたの?」 店に入った途端、真横から聞こえた声に心臓が先程とは違う意味で跳ねる。 深く深呼吸をし自分を落ち着かせ、偶然を装い笑顔で声の主の方へ振り向く。殆ど間を空けずに店に入ったと言うのに彼女はドアの横の壁に背中を預け、腕組みをしてこっち向いて笑っている。 「偶然ですね、先輩」 「本当に偶然なのかしら・・・?駄目よ、未成年がこんな店入っちゃあ」 「先輩こそ未成年でしょう。いいんですか?品行方正で知られる生徒会長がこんな場所に入ってて」 「まあ、努力と趣味の一環とでも言っておこうかしら?」 腹の探り合いをしても底が見えない。こちらの存在を確認されてしまったからには、此処に居る事は弱みにならない。良くて共倒れ、否、普段の態度からして彼女の方が有利なくらいだ。 「結構長い間尾いてきたのね」 「イヤだなあ、偶然ですよ、先輩」 「彼女達には""って名乗ってるの。それで通してもらえる?」 「(やれやれ、何もかもお見通しですか・・・)いいですよ?""」 「ありがとう。もう一つお願いがあるんだけどいいかしら」 「どうぞ」 先程までと優劣が完全に逆転してしまった。内心舌打ちしながら臨也は彼女の目的だけを探ることに専念する。 「これから起こる事を何もせず傍観してて欲しいの」 「・・・もし、邪魔をしたら?」 「あら、そしたら守ってあげられないわ」 自分を守る?暴力からという訳でもないだろう。自分と静雄の殺し合いを止める彼女の立ち回りを見ていてが弱く無いのは解るが、一人、もしくは先程までいた二人を彼女が守るのはどう考えても不可能だ。何から、どこから守るのだ。得た情報があまりにも少なすぎる。臨也は途端に身動きの取れない息苦しさを感じた。一歩間違えると、自身に危険が及ぶ。先程も彼女に見つかるという失態を犯したばかりだ。これ以上不利になるわけにもいかない。 「解りました、""」 「ありがとう、とりあえずカウンターまで行きましょう」 この店に何度も足を運んでいるのか、の足取りは確かだ。人混みをすり抜け、最短距離で目的地へたどり着く。一番端に俺を座らせ、隣に座る。服がいつもと違うからか大人びて見える彼女は高校生と言っても誰も信じないだろう。 「一体、何が起こるんですか?」 「後十分大人しくしてくれたら全部終わるわ」 丁度十分後、警官が店に一気に押しかけてきた。ここら辺で近いうちに摘発がある事は知っていたが、準備に後数日かかると聞いていた。ドアが勢い良く開き、警官が雪崩れ込んで来た途端、店の中が混乱し、騒動が始まった。咄嗟にの身体を壁と背の間に挟む。騒動はすぐに収まり、VIPルームから出てきた人間の中に、先程と共にいた少女達も泣きじゃくりながら出てきた。 「もう大丈夫そうですよ」 「あら、紳士な所もあるのね」 「が無事でないとこの後事の顛末を聞けないじゃないですか」 「そうねぇ、此処まできたら他のルートで知るのもきっと一苦労でしょうし・・・」 守ってくれたお礼に順を追って話すわ。ただし、明日学校でね。 そう言いながらは店の出口へ向かう。警官に顔見知りが居るのだろうか、去り際彼女が会釈すると、一人が敬礼で返した。目の前の出来事に付いて行けず、最後まで負けっぱなしというのも悔しい。負け惜しみと知りつつ、別れ際、彼女の腕を引いて一言。 「、今日会議あるの忘れてたよ」 「・・・ああ!」 のさもすっかり忘れてましたという反応に、ささやかな満足を得た。 「じゃあ、また明日、先輩」 「また明日、折原君」 |