優しくされたという事は、初めてでも解った。 傷つけないように、痛みを少しでも軽減させるようにと時間をかけて解された身体は、負担こそ大きかったが不思議と不快感は無かった。 なぞる様に触れられた箇所から熱が生まれ、爆ぜてしまいそうになる感覚。皮膚の薄い所を舌が這うと自分の身体なのに制御できずにビクリと撥ねる。 気付かないうちに呼吸が浅くなっていた。息が上手く吸えない。頭がぼんやりとする。くい、とアゴを持ち上げられ、気道を確保されたと思ったら首にちくりと痛みが走る。直ぐに来る熱い、ザラリとした感触。目の前で笑む男に首筋を吸われ、舐められたと気付くまでに時間がかかった。 男の顔が近付き唇に触れる、口内に舌を捻じ込まれる。絡め取られる舌を吸われ、くぐもった声ど同時にぴちゃぴちゃと卑猥な音が漏れる。その間も男の右手は身体の表面を流れることを止めない。胸の先端を指の腹で押され、下半身の割れ目を指でつ、と撫でられると羞恥心で逃げ出したくなる。しかし上に覆いかぶさる男がそれを許してくれるはずも無く、動けずにただされるがままになっていた。 悲しい訳でもないのに溢れる涙で顔が良く見えないが、きっと笑みを浮かべているのだろう。零れ落ちたそれを、シーツに落ちる前に熱い舌に舐め取られた。 「愛してるよ、」 言葉ではなく、耳元を掠める吐息にぞくり、と身体が粟立った。 朝、起きたら体が重い。徐々に覚醒していく意識が、昨日の情事を思い出させ、顔に熱が集まる。今の自分の格好は素肌にシーツ一枚で、このままでは部屋の中も出歩く事もできない。隣にいたはずの男は先に起きたらしく、先程まで隣に寝ていた気配だけを残し、此処にはいなかった。 「ああ、起きたね」 「お早う、臨也」 「おはよう、」 寝室のドアを開けた男に目をやる。先にシャワーでも浴びてきたのだろう、髪は濡れ、上半身には何も纏っていなかった。汗とそれ以外の体液で不快な身体を洗い流したかったので、倦怠感の残る身体をゆっくり持ち上げ、ベッドから起き上がる。 「、それ自覚無いよね」 「・・・何が?」 朝、起きると隣には昨晩を共にした女性が一糸纏わぬ姿で横たわっていた。未だ夢の中にいる彼女を起さないようにベッドから抜け出し、先にシャワーで身体に僅かに残る不快感を取り除く。普段より温度を少し高めに設定して、心身共に覚醒させる。それと同時に徐々に思い出す昨晩の彼女の姿。 彼女が人間を嫌っている事と、繋がった直後の反応を見れば初めてなのは明確だったが、それを知らなければどれだけ場数を踏んでいるのかと思ってしまうほど、彼女の反応は見事だった。涙をため恐怖を必死に隠そうとするいじらしさ、触れる指が吸い付くように滑らかな肌はしっとりと汗に濡れ、発せられる色香に惑わされそうになる。全て計算し尽くされた様な反応には僅かでも気を抜けばこちらが溺れてしまいそうだった。昨晩の一部分を思い出すだけで再び身体の一点に熱が集まり始め、慌てて散らす。 シャワーが熱かったので上半身には何も羽織らず、下だけ履いて頭をタオルで軽く拭く。寝室へ続く扉を開け、ベッドの上の彼女の目覚めを確認した。 学業の邪魔にならないように常に結えられている髪はシーツに散らばり、夢と現を彷徨っている瞳がゆっくりとこちらを向き、自分を捕える。ゆっくりと体を起す姿が色気を振りまき、汗と共に流したはずの熱が身の内を燻る。再び火が点きそうになり、慌てて笑みを取り繕う。ある程度予測していたとはいえ、此処まで妖艶な顔を無意識で魅せるのは反則なんてものじゃ済まない。 本当に、この女に溺れてしまうのではないかと、一抹の不安が頭をよぎった。 |