ツンツンデレツンデレツンツン











扉を開けると視界に最も見たく無い、というか先程まで追いかけていた少年の姿が映った。

「あれ?シズちゃんが先に怒られてたの?」
「あぁん?何でノミ蟲が此処にいるんだよ」
「決まってんじゃん。に呼ばれたんだよ、シズちゃんも怒られたんでしょう?」
「今死ぬか?ノミ蟲」
「二人共、その辺にしなさい」

声と共に静雄の背後から左手が伸び、右肩を抑えられる。遅れて教室から姿を見せたのはこの二人の一触即発の危機を笑顔ひとつで丸め込む事の出来る唯一の人物。

会長・・・」


二人の声が重なりそれにより再び剣呑な雰囲気が漂うが、名を呼ばれた少女は気にもとめない。

「静雄は直ぐに帰りなさい。臨也はこっち」
「はいはい」

すれ違いざまに何かあると思いきや、静かに指示に従う二人。これ以上彼女の怒りに触れると正座が待ち受けている事を知っている二人はこれ以上逆らう事は無かった。
臨也は教室に戻るの肩を抱き寄せ、まだ此方を見ている静雄の方を振り向き勝ち誇る様な笑みを浮かべる。
彼女の隣を、触れる事を許される位置にいるのは自分だと見せ付ける様に。










空き教室を選んだのは待ち時間に仕事をしやすい為、人払いをしたのは万が一喧嘩になった時に被害を最小限に押さえる為、鍵が掛かるのは他の教室も一緒だが、鍵を掛けたのは彼女じゃない。
教室が施錠される音を耳にして振り返るを手近な机に押し倒し、両手首を彼女の頭上で拘束した。触れないギリギリの距離まで顔を近付け笑みを浮かべる臨也に対し、腕力で勝てないのだから抵抗するだけ無駄だと悟ったは諦めたように溜め息を一つ吐いた。

「貴方達はもう少し大人しくできないの?」
「あれ?この状態でお説教始めるの?」
「それ以外に何か?」
「鍵の掛かる部屋で男女がすることなんて一つしか無いじゃないか」
「神聖な学び舎でこれから始めるのは生徒会長から素行の悪い後輩へのお説教よ。さっきも静雄を挑発してたじゃない」
「流石は。気付いてたんだね」
「あれで気付かない方が可笑しいわよ」

笑みを深くし、の腕を一つにまとめ左手のみで押さえつけ、空いた右手で頬から体のラインをなぞり彼女を挑発する。体勢だけは情事の前の様に甘く、言葉だけを聞けば普段と代わり映えの無い会話。

「シズちゃんも可哀想に。を好きになっちゃっても、は俺のものなのに」
「私は関係ないでしょ?その前から貴方達は喧嘩していたじゃない」
「そうだね、そうかもね」

それだけ言うと臨也は唇を押し付けてきた。普段ならそのまま唇を割り舌が口内まで侵入するのだが、今日は只何度も押し付けらるだけだ。角度を換え、何度も何度も。

「ねぇ、
「何、臨也」
「シズちゃんと二人きりだった事に嫉妬したって言ったら、どうする?」

目をぱちくりとさせるなど、思わず普段とはありえない行動を取ってしまった。

「嫉、妬?」
「そうだよ」

思考が空回りを起す。誰が、彼が?嫉妬を・・・?突然の出来事に決して弱くは無いが、此処まで自分が対応できない状態に陥ったのは初めてだった。

「・・・」
「何?何か言ってよ」
「とりあえず、場所を変えたいわ」

彼の欲求を素直に呑むのは癪だったが、この状況を打破する方法が思いつかない。
笑顔が少しだけ歳相応になった臨也の表情を見て、選択は合ってはいないがそう間違ってもいなかっただろう。
数時間後、腰も立たなくなる程後悔する事を彼女はまだ知らない。