私も悪い、あなたも悪い











いつのまにか寝ていた。エースはベッドに座る自分の腰に手を巻き付けていたが身じろぐ気配で目を覚ました。の顔を覗くと彼女も小さく呻き声を上げて起きる。

「なぜお前がここにいる」
「・・・マジ?」

人の顔を見て第一声がそれか。

「人の事抱きまくらにしといて随分な言い草だなぁオイ」
「寝ようとしている人間の側に来る方が悪い」
「寝相は良かったんだけどなぁ」

寝返りひとつ打たず眠るの横は抱きまくらの身としては楽だったが、問題は姿だった。寝る事で回避したがシーツ一枚に包まれた裸体に理性が何度焼き切れそうになったか。

「そこにある電伝虫を取ってくれ」
「イヤだね」
「ご飯持ってきてもらおうと思ったんだけど・・・」
「どうぞ電伝虫です」

エースが恭しく持って来た電伝虫を受け取り、フロントに食事を頼む。自分の分とこの男の分・・・十人前で足りるだろうか。女性一人が頼むにしては異常な量におそらく顔を引き攣らせているであろうマネージャーに彼女は更に三十分以内にという恐ろしい言葉を紡ぎ、電話を切る。

「まさか休暇中に白ひげが来るなんて思わなかったわ・・・」
「オヤジの縄張りに堂々と休暇に来るがおかしいんだって」

でもまあ、そうしてくれた方が会える確率が格段と上がるから俺は構わねぇけど。
ベッドから上半身を起しただけのの肩を抱き寄せ、耳元で囁くと思い切り睨み付けられた。

「なあ、・・・そろそろ俺限界なんだけど」
「何が?」
「服、着ないか?」

数秒の沈黙の後、バチンという大きな音が部屋に響き渡った。

「何で火拳がこんな所にいるのよ!」
「ってそこから始まるんかい!」
「人の寝込み襲うなんて海賊云々の前に男として最低よ」
「俺がいるのにも関わらず服脱ぎ始めたのはだぞ!!」
「最低!人が上司から奪い取った休暇を有意義に過ごす為に取った部屋に先回りしてたの?」
「補給に立ち寄ったらの軍艦が見えたんだよ!」

二人の不毛な言い争いはが着替えてから食事が届くまで延々と続き、食事を運んできたボーイがビクビクしながらドアをノックする音で止まった。
一人しかいないはずの部屋から何で男女のいい争いが聞こえるのだろう。
涼しい顔してボーイを迎える部屋の借主に何も言えず、少し大目のチップを頂き、彼は大人しく退散した。














の休暇っていつまで?」
「明日の朝にはここを出る予定だが」

食事も終わり、食後の紅茶を楽しむとエース。
どうせ海軍のいる島で騒動を起す阿呆は目の前にいるのだ。ここで軟禁するのが一番平和だろうとある意味物騒な事を考えながらは目を瞑る。
この男の事は嫌いではない。ただ、好きと言える立場に居ないだけだ。その立場から動く気が無い自分は、やはりこの男のことが好きではないのだろうか。何度自分に問うても答えはどこにも見えない。暗闇では無いが、濃い霧の中にいるような感覚に陥る。



名を呼ばれ目を開けると正面に私を悩ます男の顔があった。私に真剣な顔を向けるこの男は海賊。四皇"白ひげ"の二番隊隊長。対する私は海軍将校、女だというのに若くして少将に登り詰めてしまった身。
目の前の男の顔を顔の表情を変える事無く見つめながら改めて自分達の身分を思い出してると、頬に手を当てられ男の、エースの顔が顔が近付く。目を瞑ると、唇に何かが触れる感触。舐めることもせず口内に侵入するわけでもない、ただ触れるだけの優しいキスを、私はこの男と一体何度繰り返しただろう。拒む事など容易い筈だ。何故拒絶しない、何故受け入れる、何故、何故、何故・・・
左目から涙が一筋溢れたのを感じたが、それが悲しみか喜びかなんて今の私には見当もつかなかった。

「好きだ」

涙を拭う手つきがあまりにも優しすぎて、また涙が溢れそうになった。
一体いつまで、この男は私を曖昧なままで許してくれるのだろう。















自分でも解らないことに答えられる訳がない



(誰でもいいからどこにも行けない私の背中を思い切り突き飛ばしてくれ)