「来たな、火拳」 見張りは宿の一階と部屋の前に一人ずつ。宿の外の見張りは民衆を不安にさせない為にと禁じた。となると侵入するなら窓からだ。 「財布を返し損ねたんでね」 「律義な海賊だな」 「窓の鍵、開いてたぞ」 「血の匂いが篭って不快だった」 「軍艦で休めば良かったのに」 「傷だらけの姿を見せて無闇に部下を動揺させたくない」 「・・・へぇ」 口元から笑みが零れる。 「俺が来るのを待ってたんだ」 「どうやったら今のがそう解釈出来る?」 「全部」 は思わず溜め息を漏らした。エースは音もなくベッドまで近付き、包帯で固定されたの右肩をそっと撫でた。 「すまない」 「謝られる理由が無いんだけど」 「もう少し早く来ていれば付かなくていい傷だった」 「・・・最初から助けに来るつもりだったの?」 驚き、そして屈辱がを支配した。確かに、はエースに叶わない。が、敵に守られる程弱いと思われていたのか。 「・・・私はそんなに弱く見えるか」 「いいや、全然」 「じゃあ何故助けた!海賊に助けられる程私は落ちぶれてはいない!」 声が大きくなってしまった。外にいる部下に聞こえてしまう。 「」 「黙れ、火拳」 顎を引かれ、触れるだけのキスが落とされた。突然の事に思考がついて行かない。今、私は、この男に何をされた。 「俺はただ、好きな女を守りたかっただけだ」 もう一度、優しく口付けされる。 「・・・私は、海軍だ」 「あぁ」 「海賊は敵だ」 「知ってる」 「能力者が、憎い」 「そりゃあ、初耳だ」 まあ、でも仕方無いじゃねェか。惚れちまったんだから。それだけ言って、エースは窓から出て行った。 「少将、返事が無いので入りましたが、如何されましたか?」 「・・・大丈夫だ。何でもない」 |