来ないで来ないで来ないで











「ごきげんよう、ルーキー達。そしてさようなら」

旅は終わりよ、ひよこちゃん。は包囲を終えた部下から拳銃を受け取り、海賊団の前に立ち塞がった。

「随分威勢がいいが、海賊舐めてもらっちゃ困るなぁ、お嬢さん」
「あら、だって私、貴方達を壊滅するつもりで来たんですもの。本気になってくれないと困りますわ」

わざわざ女性らしい話し方で敵を逆上させる姿は、の腕を知っている部下でさえいつ見てもはらはらする。

「後悔しても知らないぞ。顔を傷つけずに売り払おうかと思ったがそれも止めだ、一人残らず殺してやる!」

船長の合図と同時に三人、に向かって来た。は三人の一撃目を交わし、一人の刀を銃の柄で叩き落とし、蹴りを入れて包囲する海兵の壁に叩きつけた。

「まず、一人」

残った二人は右の銃で足を打ち抜き、刀を蹴り飛ばし、一人の銃を取ろうとした手を踏みつけ、もう一人の眉間に銃を突きつける。

「手錠部隊!前へ!」

の掛け声と同時に、数人の部下がの元でうずくまる海賊に手錠をかけ、包囲へと戻る。

「いらっしゃい、ひよこちゃん。海軍将校の力、見せてあげる」
「か・・・かかれえっ!」

数十人の海賊が一度に襲い掛かる。は海賊達の刀を落とし、奪い、打撃のみで沈めていく。戦闘能力の落ちた海賊から、周囲を固める海兵がどんどん捉えていった。包囲網の中で残ったのは、とうとうと船長の二人きりになってしまった。

「一騎討ちですね、ひよこ船長さん」
「ふ・・・俺が負けるとでも?」

そう言って船長がに突撃する。避けようとしたが、突如伸びた右手が縄のようにの右手に巻き付いた。

「情報通り、ナワナワの実の能力者」
「そうさ!俺の身体は縄のように細く伸び、巻き付く!しかも絞めるも緩めるも自由自在だ!」

ぎりぎりと締め付けられる右手から拳銃が落ちる。は、縄になった船長の右手に触れた。途端に右手がシュルシュルと元に戻る。

「な、何!?」

知らない人間は驚くだろう。が触るだけで、海に入った時のように力が抜けるなんて。

「一体何をした!?」
「見てなかったの?触れただけよ」

は笑顔のまま一気に距離を詰め、狼狽える船長の両腕を掴む。船長が膝を付く。

「まさか・・・"能力者殺し"」
「正解。でもその名前、物騒で嫌いなの」

手錠を嵌める部下に身柄を渡し、は気付いた。

「能力者が、足りない」

つぶやくと同時に、部下の悲鳴が聞こえた。

「少将!捕らえた海賊が能力者です!」
「人数は!」
「一人・・・いえ、二人です!」

船長に海楼石の手錠が掛かってるのを確認し、騒ぎの場へ向かう。

「能力は?」
「片方は自然系です!それ以外は・・・」
「貴方達は下がりなさい。民衆に決して被害が及ばないように!」

は手錠部隊から海楼石の手錠を二つ受け取り、二人の能力者と対峙する。

「馬鹿な船長のお陰で対策が打てるわ、"能力者殺し"さん?」
「姉さん、あの女、私達より若くない?ムカつくわ」
「大丈夫よ、直ぐに殺しちゃうから。"能力者殺し"を倒せば私達、有名人ね」

能力が分からなくては無闇に手を出せない。

「そうそう、海兵さんにプレゼント」

転がる爆弾。逃げ切れたが、煙が充満して姿を見失った。途端に足下が沈み始めた。

「まさか、ドロドロの実!」
「正解ー!これでアンタは動けない!」
「そこを私のネコネコの実、モデルライオンがひと噛み」

煙が晴れてライオンが向かってくる。
間一髪で避けたが、鋭い牙が肩を裂く。血が噴き出す。

「っ!」
「右手が使えなければ銃の腕も落ちるわね!二丁持ってるのにアンタ右でしか撃ってなかったもの!」

泥人間が笑いながら叫ぶ。身体はは腿まで沈んでしまった。身動きが取れない。がそっと左の拳銃に手を伸ばす。

「やられてるなぁ、

後ろから声がした。















「火拳・・・何故・・・」
「財布を返そうと思って追い掛けたんだが。思ったより苦労してるみたいじゃないか」
「失態だわ、こんな姿見られるなんて」
「まあ、いいじゃないか。が弱ってる姿も悪くない」

エースは笑いながらの腰まで浸かった身体を引き揚げた。エースの足下はぬかるんでいない。火が泥を乾燥させているのか。

「アンタまさか、"火拳のエース"!」
「火拳って、白ひげ海賊団の!?なんでこんな所に!」
「両方やっちゃえ!」

二人が一度に襲いかかる。

「泥人間は俺がやる。はライオンいけるか?」
「火拳、どうして・・・」
「来るぞ、

敵にの方を向くエース。も左の拳銃を抜き、襲い掛かるライオンに構える。

「そんな玩具みたいな銃なんて効かないわっ!」

ギリギリまで距離を詰める。放った弾丸は、ライオンに命中した。途端に獣化が解ける。

「何で?何で?」

元の姿に戻り腕を押さえるネコネコの実の能力者の足に、もう一発撃ち込む。

「力が抜けるでしょ?海楼石入りの弾丸よ」

近づき、手錠をかける。これで一人。

「あっちも片付いたみたいね」

エースが泥人間の水分を上手に奪って泥人間はカチカチだ。泥に海楼石入りのグローブで触れると、生身の人間が倒れこんできた。こちらにも海楼石の手錠をかける。

「礼を、言うべきかしら」
「海兵からの礼はくすぐったくてしょうがねェ。飯代の礼って事にしてくれ」
「オーケー。もう直ぐ部下が戻って来るから、早くこの場を離れて」

エースの姿が見えなくなると同時に、部下がやって来た。手錠部隊の一人がに近付く。

「ご無事ですか、少将」
「民間人の被害状況は?」
「ゼロです。海兵も五人ほど軽い怪我で済みました。海賊はこの二人以外全て収容済みです。少将、肩の手当てを・・・」
「ありがとう。艦まで気力が持ちそうにないから、今日は宿を取る。出航は予定通り明朝。それまで気を抜くな」
「了解しました。宿に船医を連れて行きます」

は肩を固定し血を止め、周囲に動揺を広めないよう正義の文字の書かれたコートを羽織り、痛みに耐えながらも広場を後にした。















動悸よ治まれ私の心臓



「屈辱だわ」「少将?何かおっしゃいましたか?」「いや、独り言だよ」